2020 Fiscal Year Annual Research Report
スーパー台風に強いイネの多収・強稈遺伝子集積の発現機構と最適組合せの解明
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19H02940
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
大川 泰一郎 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80213643)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安達 俊輔 茨城大学, 農学部, 助教 (30717103)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イネ / スーパー台風 / 倒伏抵抗性 / 強稈 / 多面発現 / 収量 / 集積効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
スーパー台風に強い極強のイネ品種を効率的に開発するためには、多収化とともに太稈と強稈質をあわせもつ強稈化による倒伏抵抗性の改良が不可欠となる。本研究では、倒伏抵抗性極強の多収・良食味品種を開発するため、多収・太稈品種に由来する多収・太稈遺伝子と極強稈質品種に由来する強稈質遺伝子を低収で倒伏しやすい品種に複数組み合わせて集積し、最も高い集積効果をあげる最適な遺伝子の組み合わせを解明することを目的として実験を行った。 2019年度までに育成した多収・強稈QTLの集積系統を用いて、本年度は収量、太稈、強稈質関連形質に対する集積効果を異なるQTLの組み合わせの集積系統間で比較した。中国117号やリーフスター由来の第3染色体のSCM3/FC1にハバタキ由来の第1染色体のGn1を集積すると、断面二次モーメントが増加し、高い集積効果が認められた。Gn1は断面二次モーメントの増加効果が最も大きいとともに、稈周縁部の皮層繊維組織が厚く発達することにより強稈質化することがわかった。日本晴由来のセルロース密度を高めるQTLを第3染色体に新たに検出し、コシヒカリの強稈質化に有用と考えられた。収量関連形質では、稈と穂の形態形成過程で多面的に発現するSCM3/FC1, Gn1, SCM2/APO1の集積により、一次枝梗籾数および二次枝梗籾数が増加し,コシヒカリに比べ一穂籾数が増加することがわかった。これらのことから、異なる強稈品種に由来する強稈遺伝子をコシヒカリに集積した系統では、断面二次モーメント、皮層繊維組織の厚さ、セルロース密度に大きな集積効果があり、これらの遺伝子の多面的発現により一穂籾数が増加すること、集積効果の大きいQTLを組合せで集積することにより強稈化し、より優れた倒伏抵抗性を付与できることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り集積系統の強稈形質の集積効果とその生理機構の解析を行い、強稈形質の集積効果と大きな集積効果が得られる優良な対立遺伝子の組み合わせ、太稈遺伝子と強稈質遺伝子をもつ系統も作出できたことから、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
育成した多収・強QTL集積系統を用いて、収量および強稈関連形質に対する集積効果を異なるQTLの組み合わせの集積系統間で比較し、稈の皮層繊維組織、稈および穂の形態形成過程の成長点サイズ、強稈質の原因形質としてセルロース、ヘミセルロース、リグニン含有率を集積系統間で比較する。また、集積効果の機構解明のため、SCM1のGn1a,SCM2のAPO1,SCM3のFC1などの強稈遺伝子の発現量とその局在性、発現時期、および遺伝子間の相互作用を解析する。育成した集積系統の生産現場での実用性を評価するため、農家圃場にて集積系統の倒伏抵抗性、収量の評価を実施する。
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Research Products
(5 results)