2020 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive analysis SFBB for S-RNase in self-incompatibility of Japanese pear
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19H02946
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
安田 剛志 (高崎剛志) 神戸大学, 農学研究科, 教授 (30314511)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 加奈子 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 講師 (00647737)
藤本 龍 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (60620375)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自家不和合性 / ナシ / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
ナシ属の自家不和合性による花粉管の伸長抑制は雌ずい側因子S-RNaseが花粉管内のRNAを分解することで起こる。一方, 和合花粉管内では, S-RNaseは花粉側因子であるF-boxタンパク質群(SFBB)により無毒化されると考えられている。本研究では, SハプロタイプにコードされるSFBB群を掌握・タイプ分けし, タイプ内の対立遺伝子の有無からS-RNaseに対する特異性を推定する。その推定をSFBB融合タンパク質のS-RNaseに対する結合特性を解析することで検証することを目的とした。 今年度は, 昨年度完成したニホンナシS2, S3, S4ハプロタイプのゲノム構造を解析・比較した。各ハプロタイプには4~5個のSFBB偽遺伝子が検出され, 両側外縁部にはハプロタイプ間で類似したゲノム構造領域が存在し, SFBBと偽遺伝子が同じ順序で配列していた。また, パラログは外縁部のSFBBが内側へ遺伝子重複することによって生じていることが明らかになった。 RNA-seqデータから構築したニホンナシS6~9-SFBB配列のうち, 未だクローニングされていない配列をRT-PCRクローニングし, 配列の検証を行った。一方で, ニホンナシとセイヨウナシの雑種である品種・個体の花粉RNA-seqデータを既築のS2-とS5-SFBB群配列にマッピングし, S101-, S118-SFBB群配列を構築した。 S4-SFBB4d1およびその対立遺伝子S1-SFBB4d1を導入したペチュニア形質転換の花粉おいて, 遺伝子発現は確認できたものの, 抗FLAG抗体を用いたイムノブロットによるSFBB融合タンパク質は検出されていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Sハプロタイプのゲノム構造解析, RNA-seqデータからのSFBBコンティグ配列の構築, RT-PCRによるSFBBコンティグ配列のクローニングのサブテーマはおおむね順調に進展している。一方, 形質転換ペチュニア花粉におけるSFBB融合タンパク質が検出されていないこと, ナシの開花期間中に緊急事態宣言が発令され, 交配, 電顕顕微鏡試料の固定ができなかったことにより, これらサブテーマの進捗状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. リンゴ連Sハプロタイプのシンテニー解析 ニホンナシS2, S3, S4ハプロタイプ配列を全ゲノム配列が報告されているセイヨウナシS101, リンゴS3ハプロタイプのスキャフォード配列を比較し, SFBB対立遺伝子が偽遺伝子化する過程や遺伝子重複により新規SFBBグルーが形成される過程を考察する。 2. SFBB群のRNA-seq解析とRT-PCRクローニング S3ゲノムで新たに見出されたS3-SFBB配列を含めた未だクローニングされていないS1~k-SFBBコンティグ配列, 新たに構築したセイヨウナシS101とS118-SFBBコンティグ配列をRT-PCRクローニングする。対立遺伝子が存在しないと判断されているハプロタイプに対してはゲノミックPCRおよび全ゲノム解析を実施し, その有無を検証する。一方で, セイヨウナシS101あるいはS118を共有する品種の花粉をRNA-seq解析して, S101, S118以外のセイヨウナシSがコードするSFBB群配列を構築する。 3. ペチュニアの形質転換系を用いたSFBBタンパク質の発現 更に数多くのペチュニアの形質転換体の作出を行うとともに, S-RNaseを欠失した自家和合性ペチュニアへのニホンナシS1-およびS4-RNaseの導入を進める。 4. 電子顕微鏡による和合・不和合花粉管の解析 受粉12時間の500μmの花柱切片を加速電圧300kV下で連続画像を取得し, 三次元構造を構築する。一方で, 受粉後2時間, 6時間の免疫電顕観察により和合・不和合花粉管内のS-RNaseの挙動を調査する。 得られた結果を取りまとめ, 学会発表と論文発表を行う。
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