2019 Fiscal Year Annual Research Report
Is self-incompatibility in Citrus spp. governed by S-RNase?
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19H02949
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
本勝 千歳 宮崎大学, 農学部, 准教授 (30381057)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牛島 幸一郎 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (20379720)
稲葉 丈人 宮崎大学, 農学部, 准教授 (00400185)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 果樹 / カンキツ / 自家不和合性 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年カンキツ属のいくつかの品種で自家不和合性Sハプロタイプが決定され,またこれまでに行った次世代シークエンス解析の結果から,SハプロタイプとT2RNase型との対応関係が示唆された.このことから,T2RNaseがS遺伝子である可能性が高いと考えられる.そこで本研究では,組換えタンパク質によるT2RNaseの機能解析,T2RNase型とSハプロタイプとの対応関係の調査と新規T2RNase遺伝子の獲得,そしてSハプロタイプとT2RNase遺伝子の遺伝解析を行い,T2RNase遺伝子とカンキツ属植物の自家不和合性の関連性について知見を得ようとするものである. 本年度は,ヒュウガナツとトサブンタンの正逆交雑から得られた交雑実生群およびフォーチュン(クレメンティン×オーランド)×オーランド,フォーチュン×クレメンティンの交雑によって得られた交雑実生群を用いて,S-RNase様T2 RNase遺伝子の遺伝様式を調査し,S遺伝子座との位置関係を明らかにした.遺伝解析の結果,ヒュウガナツとトサブンタンから3種類,フォーチュンとオーランドおよびクレメンティンから4種類の遺伝子がS対立遺伝子と共分離を示す分離比で後代に遺伝していることが明らかとなった.よって,これらの遺伝子がS遺伝子座に座乗しているか,極めて近傍に存在していることが示された.In vitroでの花粉管伸長阻害を再現するために,ヒュウガナツとトサブンタンに由来するS-RNase様配列を基に組み換えタンパク質を作製した.ロングリードシークエンスによるIso-seq解析については,カンキツの自家不和合性がS-RNaseによるものである可能性が高くなったために,花粉側因子の同定に適用した.今年度はヒュウガナツとバンペイユの花粉からtotal RNAを抽出し,Iso-seqにより発現遺伝子のシークエンスを獲得した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた実験項目の中で,交雑後代を用いた遺伝解析については,全ての解析をほぼ完了することができた.また,新規S-RNase様遺伝子の分布と調査については,公共データベースに登録されているカンキツ花のRNAseqデータを入手して,S-RNase相同遺伝子を探索したところ新たに複数のS-RNase様遺伝子が獲得されている.また,我々で保持しているいくつかのカンキツ系統より採取した花柱を用いて,RNAseqを行いデータを獲得して,これらからもさらに新規のS-RNase様遺伝を獲得している.これらの分布についても,現在約40系統ほどのカンキツ品種よりDNAを抽出して,解析の準備を進めている.新規S-RNase様遺伝子の獲得については,当初の予定以上に進行しているために,さらにS-RNase型自家不和合性植物の花粉側因子であるF-Box遺伝子について,カンキツ属植物の花粉において発現している相同遺伝子の獲得へと発展させようとしている.組み換えタンパク質を使用したin vitroでの自家不和合性反応の再現については,組み換えタンパク質の作成まで完了しており,次年度以降での実験に向けて現在のところ順調に進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,これまでに花粉からIso-seqによって獲得しているロングリードシークエンスを解析して,花粉で発現している花柱側因子の探索を進めたいと考えている.また,これまでに獲得したS-RNase様遺伝子について,カンキツ属植物での分布を今年度明らかにする予定である.In vitroでの花粉発芽試験については,まず自家不和合反応のin vitroでの再現を試み,それができれば組み換えタンパク質を用いた,S-RNase様遺伝子の機能解析を行う.また,自家不和合性カンキツ属植物であるヒュウガナツについて,枝変わりの自家和合系統のいくつかを研究代表者の研究圃場において保持している.それらの自家和合化とS-RNase様遺伝子の関係からS-RNase様遺伝子の自家不和合性への関与を検証したいと考えている.今年度は,新型コロナウィルスの影響により,カンキツの開花時期に大学への入構が制限されたために,花のサンプリングが例年に比べて十分に行うことができなかったが,できるだけ影響を最小限に留められるよう実験を進めたい.
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Research Products
(2 results)