2020 Fiscal Year Annual Research Report
有用根圏細菌処理により植物に誘導される青枯病菌排除現象の分子機構解明
Project/Area Number |
19H02954
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
清水 将文 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (60378320)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 義治 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (50301784)
石賀 康博 筑波大学, 生命環境系, 助教 (50730256)
別役 重之 龍谷大学, 農学部, 准教授 (80588228)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 青枯病菌 / エフェクター / 硝酸トランスポーター / 拮抗細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
2種の拮抗細菌(Mitsuaria sp. TWR114およびRalstonia sp. TCR112)を混合接種した植物で起こる青枯病菌排除現象の分子機構を明らかにするため、昨年度に拮抗細菌および青枯病菌を接種したトマトを用いてRNAシーケンスを行った。本年度は、RNAシーケンスデータを詳細に解析し、青枯病排除現象に関わると予想される遺伝子の洗い出しを行った。その結果、混合接種区では200以上の遺伝子が無処理区よりも発現量が増加しており、うち148遺伝子が拮抗細菌の単独接種区およびL-ヒスチジン(青枯病抵抗性誘導物質)区では発現変動の見られない遺伝子であることが明らかとなった。それらの遺伝子の大半がペプチドや硝酸の輸送に関わる遺伝子であった。導管中の硝酸濃度が青枯病菌の導管内での増殖に必須であることが報告されていたことから、各処理区のトマトの導管液中の硝酸濃度を測定したところ、拮抗細菌の混合接種区では硝酸濃度が著しく低下していることが明らかとなった。このことから、導管液中の硝酸濃度の低下が青枯病菌排除現象に関与する可能性が示された。この仮説が正しければ、これまでに報告のないユニークの生物防除メカニズムとして新規性の高い知見となり得るものと考えられる。 一方で、TWR114とTCR112のゲノム解析を行ったところ、興味深いことに両菌株とも青枯病菌のもつエフェクターと相同性の高いタンパク質をコードする遺伝子をそれぞれ2種類保有していることが判明した。現段階では、これらの遺伝子と青枯病菌排除現象との関連性は不明であるが、植物体への免疫誘導に関わる可能性もあるため、次年度はこれら遺伝子の破壊株を作成して、生物防除効果への影響を検討したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNAシーケンスにより、青枯病菌排除現象に関わる可能性のある遺伝子が予定通り選抜されつつある点では順調であるが、一方で、拮抗細菌および青枯病菌への蛍光タンパク質遺伝子導入に未だ成功しておらず、当初予定していた各細菌の植物体内での挙動解析実験に着手できていない。これらのことを勘案し、おおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は以下のような実験を実施し、研究成果を取りまとめる予定である。 1.トマト導管液中の硝酸濃度の経時的変化を解析するとともに、導管液中での青枯病菌の増殖を検討し、硝酸濃度と青枯病菌排除現象との関連性をより詳細に解析する。 2.TWR114とTCR112がもつエフェクター遺伝子を破壊し、生物防除効果への影響を解析する。 3.未だ成功していない細菌株への蛍光タンパク質遺伝子の導入を完了し、植物体内での細菌株の挙動解析を進める。 4.申請時には計画していなかったが、トマトでレポーターアッセイ系を構築し、硝酸トランスポーターや防御関連遺伝子の時空間的な発現変動を解析する。
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Research Products
(4 results)