2019 Fiscal Year Annual Research Report
On molecular mechanism to produce phenotypically adaptive variation among genetic clones of ants
Project/Area Number |
19H02964
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
遠藤 俊徳 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (00323692)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 英祐 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (40301874)
伊藤 文紀 香川大学, 農学部, 教授 (50260683)
里村 和浩 北海道大学, 情報科学研究院, 特任助教 (90815804)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 嗅覚受容体 / イカリゲシワアリ / 反応閾値 / 遺伝的クローン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、コロニー内の全メンバーが遺伝的クローンであるイカリゲシワアリ(Tetramorium lanuginosum)を材料に用い、各ワーカーの表現型の一つである糖に対する反応閾値(個々の個体がどの濃度からメレジトース溶液を飲み始めるかの値)の個体間変異を測定し、個体間変異と集団内分布が存在することを示す。さらに、集団内の反応閾値分布が、時間と共に環境に適応的に変化することを示し、その変化がどのような分子的機構によって出現するかを特定し、無性生殖の生物の適応的な表現型分散が遺伝子型ではなく、その塩基配列上に起こる化学的修飾に基づくエピジェネティクスによって制御されている事を示すことを目的とする。 令和元年度は【実験1】閾値分布の環境変化に対する応答、と【実験2】イカリゲシワアリのゲノム解読とメレジトース受容体遺伝子の特定を行った。 【実験1】イカリゲシワアリがメレジトース(糖)にはほとんど反応せず、環境変化にも応答しないことが判明した。そこで、アミノ酸や脂質に対する量的応答がある可能性模索し、ミールワーム抽出液に対する応答を見出した。しかし実験用コロニー維持がやや難しく、この段階で多くのコロニーが死滅したため、残存4コロニーのみを2群に分けて検定した。その結果、高濃度、低濃度の抽出液にそれぞれ慣らした個体群は反応閾値が各方向へ有意にシフトしていることが観察された。しかし、各コロニーの個体数も減ったので再現実験を要する。 【実験2】ゲノムデータを取得し嗅覚受容体を探索したところ、一般的なGPCR型受容体では特別な多様性が見つからず、脂質やアミノ酸の化学受容体は異なるタイプが示唆された。探索幅を広げたところ、脂質受容体と考えられる遺伝子の部分配列が見つかった。しかし、既知の相同遺伝子とやや構成が異なっており、種固有の嗜好を反映したものと考えられる蛾、さらなる検証が必要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イカリゲシワアリが糖にほとんど興味をを示さなかった点は想定外であったが、反応閾値の材料としてアミノ酸または脂質であろうと予想し、検定材料をミールワーム抽出液に変更したところ、反応閾値の個体差を観察できることが確認された。この結果を用いて実験を進めることができている。また、NGSによるゲノム配列決定を行い、対応する嗅覚受容体候補を推定できた。これによりアリの行動多様性を探る幅が広がった。
|
Strategy for Future Research Activity |
実験用コロニーの維持が難しく、実験可能数が減ってしまったため、再現実験を行うことで検証を行う。NGSの精度が十分でなかったので高精度化して嗅覚受容体の系統特異性を解析する。メチル化などのエピジェネシスが行動個体差に及ぼす影響検証のため、行動の異なる個体のバイサルファイトシーケンシングを行う。
|