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2019 Fiscal Year Annual Research Report

社会性昆虫の階級分化と季節適応:母性効果の世代を超えた表現型多型の発生制御機構

Research Project

Project/Area Number 19H02965
Research InstitutionUniversity of Tsukuba

Principal Investigator

松山 茂  筑波大学, 生命環境系, 講師 (30239131)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 柴尾 晴信  筑波大学, 生命環境系, 研究員 (90401207) [Withdrawn]
沓掛 磨也子  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (90415703)
Project Period (FY) 2019-04-01 – 2022-03-31
Keywords社会性アブラムシ / 階級分化 / 母性効果 / 季節多型
Outline of Annual Research Achievements

松山は柴尾(松山研・研究員)と共同して、ハクウンボクハナフシアブラムシの階級・モルフ分化に関与する環境要因を特定し、社会制御における母性効果(=環境情報の母子間伝達)の役割の重要性について検討した。本種は不妊の兵隊階級のみならず、季節に応じて翅型、性、生殖様式の異なる多様なモルフを産生する。また、本種のコロニーにおける兵隊および有翅虫の割合は、季節の推移に伴い変動する。野外調査の結果、兵隊は春から夏にかけて大きく成長したコロニーに高い割合で見られ、有翅虫は盛夏を過ぎる頃から成熟コロニーにおいて多く出現することが分かった。人工飼料による室内飼育実験の結果、階級・モルフ分化を誘導する季節の合図として3つの環境要因(日長・温度・密度)を特定し、これら3要因の特定条件の組合せで兵隊や有翅虫を排他的に分化誘導できることを見出した。さらに、兵隊や有翅虫の分化においては、親世代が経験した環境条件(密度/日長)が子世代のモルフ決定に強く影響していた。母性効果は、巣の社会的情報 (密度) と外界の環境情報 (日長、温度など) を次世代に伝達する手段として重要であり、季節に適応した階級・モルフの生産を可能にすると考えられる。
沓掛は、兵隊や有翅虫の分化制御に関わる母性因子を探索するため、本年度は野外ゴールから採集した雌成虫のRNAseq解析をおこなった。野外ゴールは7月から9月にかけて1ヶ月おきに採集し、雌成虫の頭部および卵巣由来のトータルRNAからcDNAライブラリーを作成し、HiSeqで解析した。その結果、成虫頭部において、インスリン様成長因子(IGF)様ペプチドの遺伝子発現が7月と9月の間で有意に減少していることがわかった。この結果は、IGF様ペプチドが季節の合図に応答して変動する母体側の情報伝達物質である可能性を示唆するものである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

ハクウンボクハナフシアブラムシの階級・モルフ分化に関与する環境要因を特定し、母性効果の役割の重要性について確認した。階級・モルフ分化を誘導する3つの環境要因は、日長、温度、密度であり、これら3要因の特定条件の組合せが季節の合図となり、兵隊や 有翅虫を分化誘導していることが分かった。兵隊や有翅虫の分化に母性効果が関与するかを検証するために、密度や日長といった個別の環境要因を操作し、親世代と子世代を独立にさまざまな環境条件で育てたところ、母親の受けた環境条件が子の表現型に強く反映されることを確認できた。すなわち、季節の合図を次世代に知らせる「母-胚間コミュニケーション」の存在を示す根拠が得られた。
季節の合図に応答して、胚の階級・モルフ分化を制御する母性因子を探索した。初夏から秋にかけて野外からサンプリングした個体を用いてRNAseq解析をおこなったところ、その候補因子として成虫頭部で発現するIGF様ペプチドを発見することに成功した。よって研究はおおむね順調に進展していると考えられる。今後、IGF様ペプチドの発現変動を誘導する環境因子を特定するとともに、IGF様ペプチドの遺伝子発現量と、次世代における兵隊・有翅虫の出現頻度との相関についても詳細に検討を進めていく。

Strategy for Future Research Activity

アブラムシの階級・モルフ分化において、日長、温度、密度などの環境要因の特定条件の組合せが季節の合図となっていることから、親から子へ母性効果で伝わる環境情報として、すでに分かっている密度と日長のほかに、温度も重要であると予想される。今後は親 世代と子世代を4通りの温度条件(親世代-子世代: 高温-高温、高温-低温、低温-高温、低温-低温)で育て、母親が知覚した温度情報が子の表現型に反映されるかを確認する。さらに、3つの環境要因(日長・温度・密度)を複合的に組み合わせた場合に、そのような複雑な環境情報が母子間で伝達されるかを確認する。
アブラムシが経験する季節の合図は、具体的には日長、温度、ゴールの栄養状態などが考えられる。今後は、成虫頭部においてIGF様ペプチドの遺伝子発現変化を引き起こす具体的な環境要因を特定するため、人工飼料飼育系を用いた解析を試みる。まずは日長と温度に着目し、長日・高温、長日・低温、短日・高温、短日・低温の4通りの条件で飼育した成虫の頭部RNAseqまたはqRT-PCRにより遺伝子発現量を解析する。さらに、これらの飼育条件下における次世代の兵隊および有翅型の出現率を調べ、IGF様ペプチドの遺伝子発現との相関について解析する。

  • Research Products

    (5 results)

All 2021 2020

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (4 results)

  • [Journal Article] Temporal division of labor in an aphid social system2021

    • Author(s)
      Shibao Harunobu、Kutsukake Mayako、Fukatsu Takema
    • Journal Title

      Scientific Reports

      Volume: 11 Pages: 1181~1191

    • DOI

      10.1038/s41598-021-81006-z

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] 社会性アブラムシの母性効果を介したカースト制御と季節適応2021

    • Author(s)
      松山茂(筑波大・生命環境)、沓掛磨也子(産総研・生物プロセス)、深津武馬(産総研・生物プロセス)、柴尾晴信(筑波大・生命環境)
    • Organizer
      第65回日本応用動物昆虫学会大会
  • [Presentation] 社会性アブラムシの巣内ホメオスタシスを基軸とした表現型多型の制御機構2021

    • Author(s)
      柴尾晴信(筑波大・生命環境)、沓掛磨也子(産総研・生物プロセス)、深津武馬(産総研・生物プロセス)、松山茂(筑波大・生命環境)
    • Organizer
      第65回日本応用動物昆虫学会大会
  • [Presentation] 人工飼料飼育系を用いた社会性アブラムシの兵隊分化に関わる分子機構の解明2021

    • Author(s)
      沓掛磨也子(産総研・生物プロセス)、柴尾晴信(筑波大・生命環境)、深津武馬(産総研・生物プロセス)
    • Organizer
      第65回日本応用動物昆虫学会大会
  • [Presentation] 社会性アブラムシにおけるフェロモンと植物ゴールのアレロケミカルを介した労働分業2020

    • Author(s)
      松山茂(筑波大・生命環境)、沓掛磨也子(産総研・生物プロセス)、深津武馬(産総研・生物プロセス)、柴尾晴信(筑波大・生命環境)
    • Organizer
      第64回日本応用動物昆虫学会大会

URL: 

Published: 2021-12-27  

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