2020 Fiscal Year Annual Research Report
バキュロウイルスが多角体の大量産生を実現する細胞内チューニングプロセスの解明
Project/Area Number |
19H02966
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
勝間 進 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (20378863)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バキュロウイルス / ポリヘドリン / 多角体 / 核移行 / 結晶化 / 転写 / 翻訳 / 宿主制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
バキュロウイルスの最大の特徴は,感染の最後期に「多角体」と呼ばれるタンパク性の結晶体を大量に産生することである.多角体の主成分はポリヘドリンであり,ウイルス感染細胞全タンパク質の50%を占めることもある.このように単一のタンパク質が細胞全タンパク質の数十%を占めるシステムは,多細胞真核細胞ではこのバキュロウイルス-昆虫細胞系のみである.本研究では,バキュロウイルスが多角体の大量産生を実現する細胞内チューニングシステムの全貌を解明することを目的とする.今年度は以下の成果を得た. ・ポリヘドリンはKRKKという塩基性アミノ酸クラスターがその核移行に必須であることが知られている.今年度は,この4アミノ酸に1,2,3個の変異を導入したウイルスを作成した. ・脂肪体由来のNIAS-aff3において,卵巣由来BmN-4細胞と比較すると多角体が大きくなり,立方体型になることを明らかにしていた.今年度は,NIAS-aff3細胞の詳細な性状解析を含めて論文を発表した.ウイルスが同じでも,感染・増殖環境によって多角体の形状が変化することを示すことができた. ・BmNPVのp24と呼ばれる遺伝子を欠損すると,立方体の多角体を形成することを明らかにしていたが,本年はこの結果をまとめ論文発表した.この論文において,中国から配列のみ発表されていた四角の多角体を形成する変異体の原因がp24における点変異によるものであることを明らかにした.ポリヘドリン遺伝子以外の遺伝子変異によって多角体の形状が変化することを示した数少ない報告となった. ・宿主のHsp90を阻害することでBmNPV感染時におけるポリヘドリンの発現が著しく抑制されることを明らかにしていたが,それが初期遺伝子ie1の転写抑制によるdelayed early, early, late遺伝子の発現遅延によるものであることを証明し,論文発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多角体の形状や発現に関する成果を3本の論文として公表できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに作成した変異体やプラスミドを利用して、多角体の大量産生機構に関する研究を進める。また、ChIP-seq等の解析を通じて、宿主環境とポリヘドリン発現との関係を調査する。
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