2019 Fiscal Year Annual Research Report
Regulatory mechanisms of nutrient selective behavior by metabolic and endocrine control in omnivorous insects
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19H02967
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永田 晋治 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (40345179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 雅京 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (30360572)
倉石 貴透 金沢大学, 薬学系, 准教授 (90613167)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 昆虫 / 摂食行動 / 選好性 / ホルモン / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では、雑食性昆虫種で認められる栄養分選好性を分子レベルで探究することを目的としている。特にスズムシやコオロギなどの直翅目昆虫種では、本能的な選好性行動が健全な成長と生育に必須であることが分かっている。この現象を分子レベルで明らかにするため、フタホシコオロギを用いて研究を遂行している。令和元年度では、以下の通り、3つの研究を進めた。 ①フタホシコオロギの栄養分選好性は、脂肪体で発現しているペプチドホルモンおよび脂肪体内での代謝系が調節していることを明かにした。また、それに関わる鍵分子を見出すため、現在スクリーニングを行っている。 ②また、脳に付随している側心体(CC)は体内の栄養分のセンサーとして機能しており、その器官における、内分泌調節をRNA-Sequencing解析にて検討した。CC特異的な内分泌系プロファイルで、栄養分選好性行動の制御機構を解析中である。 ③さらに、動物食および植物食を特徴づける餌中の栄養成分として、脂質が重要であることが分かった。令和元年度では、ステロール成分に着目をしたが、今後は、他の脂質成分などと総合的に検討する予定である。 これらの成果は、令和元年度に国内外の学術系学会にて発表し、さらに国際誌でも発表するに至った。 本申請研究は、フタホシコオロギなど直翅目昆虫を用いて多く認められている、生理現象を紐解くものであるが、その機構解明に前進している。最終的には、多くの生物種で認められる本能的な栄養分選好性行動(セルフセレクション)については、本申請研究がパイロット研究となることも期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の項目別に記す。 ①脂肪体由来の栄養分選好性調節因子の探索:フタホシコオロギにおいて、栄養分選好性に関わる因子として脂肪体で発現しているペプチドホルモンであることが分かった。インスリンなどを始め、どの分泌性因子が重要であるかを明らかにするため、脂肪体由来のRNA-sequencing解析をした。インスリン以外にも、TNF-αのオルソログなどを見出すことができた。一方、脂肪体内の代謝も選好性行動に関わるため、解糖系などにおける各種基本代謝酵素をRNAiにより、3大栄養素の選好性行動を指標にスクリーニングを行った。 ②摂食行動およびエネルギーホメオスタシスを調節するCC-CAにおける内分泌系:栄養分のセンサーとして脳に付随している側心体(CC)における、内分泌調節機構を考察するため、CCを単離し、RNA-Sequencing解析を行った。ここから、CCに発現しているAKHをはじめとする各種内分泌性因子、およびホルモン制御に関わると考えられるホルモン受容体の発現プロファイルを作成した。 ③動物食および植物食を特徴づける餌中の栄養成分の同定:雑食のフタホシコオロギの選好性は、餌中の脂質成分が重要であることが分かってきた。つまり、餌中の脂質成分により、動物食あるいは植物食を決めていることが示唆された。そこで、平成元年度では、脂質のうち、ステロール成分を分析した。各組織内でのステロール分析により、ステロール化合物の代謝は主に中腸で行われていることが分かった。これまでに、植物性のステロールと動物性のステロールでは選好性行動で違いが認められていないため、他の脂質成分などと総合的に検討する必要があることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
①脂肪体由来の栄養分選好性調節因子の探索:令和元年度に見出した、フタホシコオロギの脂肪体で発現している選好性行動に関わると考えられるペプチド性因子を合成あるいは大腸菌発現産物により調製する。調製したペプチド性因子による選好性行動への影響を検討する。一方、インスリンなど、細胞内情報伝達経路が既に明らかである因子については、ペプチドを投与したり、RNAiにより遺伝子ノックダウンを行ったりすることで、情報伝達系の活性化と選好性行動との関連性を検討する。また、脂肪体のRNA-Sequencing解析で明らかとなった、転写量が変動する因子に関して、詳細に分析する。特に、選好性行動に寄与する転写調節因子をスクリーニングすることで同定していく。 ②摂食行動およびエネルギーホメオスタシスを調節するCC-CAにおける内分泌系:令和元年度で分析した側心体(CC)のRNA-Sequencing解析をさらに詳細に分析し、各種内分泌性因子、受容体分子のRNAiによるノックダウンにより、栄養選好性に寄与している因子を同定する。また、CCを中心とした内分泌ネットワークのプロトタイプを構築する。 ③動物食および植物食を特徴づける餌中の栄養成分の同定:餌中の脂質成分をさらに分析し、フタホシコオロギの体内への注射、餌への添加を行い、選好性(嗜好性)行動に関わるか、について検討する。さらには、①と②との関連性で明らかとなる因子との関連性も明らかにする。
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