2019 Fiscal Year Annual Research Report
有明海における稀少板鰓類の繁殖機構および成育場の機能解明による保全基盤の構築
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19H02977
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山口 敦子 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (10310658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古満 啓介 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 特任研究員 (30554266)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 胎生 / エイ類 / 板鰓類 / 成熟 / 胚休眠 / 成育場 |
Outline of Annual Research Achievements |
干潟・河口域がもつ繁殖・成育場としての機能を明らかにすることを目的とし、板鰓類の多様性、繁殖生態および幼魚の出現状況、トビエイ亜目のエイ類が胚発生初期に休眠期を持つ可能性を調べるために、有明海北部の河口域から有明海中央のやや深い海域にかけて設定した5つの定点で定期的に野外調査を行った。採集した板鰓類の同定と生物測定等を行った後、生殖腺の組織学的観察、年齢査定と成長解析、胃内容物の分析等を行った。その結果、サメ類6種、エイ類9種の季節的な分布や出現状況成熟段階または年齢別のデータを蓄積できた。また、採集した板鰓類のうち、臍帯痕を持つものについては別途研究を行い、月別の分布や出現状況についてのデータを収集した。同様の研究を複数年行うことで、成熟サイズおよび年齢、交尾・排卵・受精時期、子宮内での精子貯蔵の有無等の繁殖特性を明らかにする予定である。 アカエイ類については未だ解決していない分類学的検討を行うとともに、外部形態等データの収集と解析、また現存する標本調査を行い、未記載種を公表するための準備を進めた。 トビエイ亜目の胎生エイ類については、胎仔及び母体の子宮絨毛組織や分泌物等を採集した。エイ類では受精卵や発生初期の胎仔の収集が特に困難であるが、これまでにアカエイ、シロエイやナルトビエイ等の複数種の受精卵や胎仔の収集に成功した。全ての発達段階を明らかにし、ステージ区分を行うためには更なる試料が必要である。胚発生・休眠・再開の実態を集団レベルで明らかにするため、次年度以降、蛍光顕微鏡等で細胞レベルでの詳細な観察を行う予定であるが、今年度は胎仔の成長の詳細な記録、外部・内部形態の発達過程を重点的に研究した。なお、今年度は、アカエイの繁殖と胎仔の発達過程やズグエイに関する成果をまとめ、国内・国際学会で計4題を口頭により発表したほか、国際誌に2篇の原著論文を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最も懸念されていた野外調査やサンプル採集は概ね予定通り進み、材料が順調に入手できているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題は野外調査が極めて重要であるため、野外調査の成功の可否が課題の遂行に大きく影響する。今後も安全かつ臨機応変に対応しつつ、野外調査を継続する。また、エイ類の休眠卵に関する研究についてはこれまでに申請者らのグループが確立した独自の手法により推進するほか、サメ・エイ類の保全に配慮し、フィールドで生きた状態を保ちながら成熟や胎仔の発育状態を明らかにするための手法開発を目指す。得られた成果については、随時、積極的に論文としてまとめ、国際誌での公表に努めていきたい。
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[Journal Article] Isolation and Characterization of Polymorphic Microsatellite Loci from Pale-edged stingray, Telatrygon zugei (Elasmobranchii, Dasyatidae)2019
Author(s)
Shi, F, Wang, H, Yamaguchi, A, Zhang, B, Zhang, J
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Journal Title
Integrative zoology
Volume: 14(3)
Pages: 318-322
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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