2022 Fiscal Year Annual Research Report
有明海における稀少板鰓類の繁殖機構および成育場の機能解明による保全基盤の構築
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19H02977
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山口 敦子 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (10310658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古満 啓介 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 特任研究員 (30554266)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 胎生 / 胚休眠 / 成熟 / エイ類 / 初期発生 / 成育場 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度にあたる今年度も、有明海北部の河口域から有明海中央部にかけて設定した各定点で定期的に野外調査を継続した。板鰓類の同定と生物測定等を行った後に、年齢と成長や成熟サイズ、交尾・排卵・受精時期等の繁殖特性、食性等の研究を行い、フィールドで得た環境データとあわせて解析することで、サメ・エイ類各種の成熟段階と年齢別の季節分布や出現状況に関する知見を得た。また、胎生エイ類の受精卵、胎仔及び母体の子宮絨毛組織や分泌物等を引き続き採集し、胚の細胞レベルでの詳細な観察を進め、胚発生と休眠、胎仔の発達過程についての解析を行った。これらは、新規の科学的知見となるだけでなく、将来の保全基盤としても利用可能なものである。種ごとに得られた生態的な知見とともに、有明海の海域別の利用状況を種別に類型化した。その結果、有明海に生息する種にとどまらず、外海から繁殖のために回遊してくる種も含め、ナルトビエイやアカエイ、アカシュモクザメ等、少なくとも9種のサメ・エイ類が有明海の干潟・河口・浅海域を成育場としていること、各種の繁殖・出産時期を少しずつずらすことで、各種の幼魚は捕食者を避け、限られた空間と餌資源を順に利用していることが明らかになった。このように、有明海の特殊な干潟・河口域は内外の多様なサメ・エイ類を育む成育場として重要な機能を果たしていることとともに、この水域を保全することの意義を明確にした。これらの成果は順に論文としてまとめ、国際誌に投稿しており、一部は公表済みとなったところで、今後も引き続き国際誌での成果発表に努めたい。また、多くの種の生態学的知見、特に繁殖機構や成育場に関する知識は、代表者が委員を務めているIUCN(国際自然保護連合)での絶滅リスクの評価やレッドリスト作成、保全に資する行動計画の策定などに速やかに役立てることができ、学術的な貢献に加え、社会的な貢献も果たすことが出来た。
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Research Progress Status |
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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