2020 Fiscal Year Annual Research Report
ポリネーターの衰退による間接的なチョウ類の絶滅-草原性昆虫保全の新たな視点
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19H02979
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
平井 規央 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (70305655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 昇平 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (30553028)
矢後 勝也 東京大学, 総合研究博物館, 助教 (70571230)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒメシロチョウ / 保全 / 草原性 / マイクロサテライト / 遺伝的多様性 / ポリネーター |
Outline of Annual Research Achievements |
生息調査では,2019~2021 年の間に熊本5 カ所,青森3 カ所,福島4 カ所,宮城3 カ所,岩手1 カ所で本種の成虫や卵を確認した.ツルフジバカマの結果率については,青森ではすべての地点で50%以上であったが,福島3 カ所,熊本1 カ所,大阪では0~44%と低い地点が見られた.結実率は青森の2 カ所で60%前後であったが,その他は全体に低く,6~46%であった.発芽率は青森の2 地点で42%以下だったほかは,いずれの地点でも50%以上で比較的高かった.前年度に開発した9個のマーカーを用いてSTRUCTURE 解析を行い,遺伝構造を評価した結果,現時点の解析結果で、本種は熊本個体群とそれ以外の2 つのクラスターに大きく分かれることが示された.さらに,青森,福島,宮城,岩手の個体群を用いて解析すると,地点ごとに4つのクラスターに分かれた.遺伝的多様性を比較した結果,Hs について熊本では0.14 未満と低かったが他の個体群では0.46 以上と高く,岩手が0.57 と最も高かった.AR についても熊本では1.4 未満と低かったが,他の個体群では2.5 以上と高く,岩手が3.21 と最も高かった.以上の結果から,本種の生息が確認された地点でも,寄主植物の繁殖に関わる結果率,結実率,発芽率は,必ずしも高くはなく,寄主植物の衰退の要因となっている可能性が考えられた.マイクロサテライトマーカーの開発と解析の結果から,本種は個体群ごとに分化しており,本州の個体群ではある程度の遺伝的交流があるものの,熊本個体群では遺伝的多様性が低く,個体群の孤立が進んでいると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外調査について、宮城県、岩手県などを追加し、ヒメシロチョウの生息を確認できた。また、ツルフジバカマについても各生息地で結実率や種子のデータを得ることができた。 訪花昆虫についても、青森県、福島県で記録を行い、花粉の形状の観察とともに媒介昆虫の解析を進めている。 DNA実験では、開発した9個のマーカーを用いて、実際に各地の遺伝的多様性のデータが得られ始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
野外調査については、実際にツルフジバカマの訪花昆虫を採集し、種の同定と送粉者としての働きを評価する。また、ヒメシロチョウの生息調査と、ツルフジバカマの結実調査も継続する。 DNA実験については、すでに解析を行った本種5個体群に加えて、そのほかの個体群についても解析を進める。ツルフジバカマや他のチョウ類等についてもマーカーの開発と解析を試みる。
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Research Products
(25 results)