2020 Fiscal Year Annual Research Report
ビロウドカミキリからマツノマダラカミキリへ-細胞内寄生細菌の人為的導入-
Project/Area Number |
19H03004
|
Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
相川 拓也 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90343805)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安佛 尚志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (30392583)
高務 淳 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80399378)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ボルバキア / ビロウドカミキリ / マツノマダラカミキリ / マイクロインジェクション |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も青森県の調査地において、実験に使用するビロウドカミキリ終齢幼虫を採集した。カミキリムシのフラスが多く出ているマツの丸太を探し出し、それらを割材することで材内のビロウドカミキリ終齢幼虫を取り出した。これらのビロウドカミキリ終齢幼虫体内の脂肪体からボルバキアを抽出してボルバキア溶液を作成した。このボルバキア溶液を、マイクロインジェクション法を用いてマツノマダラカミキリの受精卵に1個ずつ注入した。孵化した幼虫は人工飼料の入った三角フラスコ内で飼育し、終齢幼虫そして蛹を経て成虫に発育するまで飼育管理した。全部で160個のマツノマダラカミキリ卵にボルバキア溶液を注入し、そのうち孵化したのは38%であった。昨年度の結果から、卵にボルバキアを含まないPBS溶液だけを注入した場合、卵の孵化率は80%程度であることが示されている。昨年度と今年度の孵化率の大きな差は、ボルバキアがマツノマダラカミキリの卵の発育に悪影響を与えたためと推測される。また、成虫まで発育した個体の割合は23%(36頭)となり、その割合はさらに減少した。36頭の成虫を対象にボルバキアの診断PCRを行ったところ、ボルバキアに感染していたのは3頭であった。ボルバキアに感染していた頭数は少なったものの、今回実施したマイクロインジェクション法を用いれば、マツノマダラカミキリにボルバキアを感染させることが可能であることが示された。一方、マツノマダラカミキリの細胞培養では、一部の細胞株で引き続き増殖が確認されている。増殖の速度も上がってきたことから、この状態を長期間維持できるよう努めるとともに、タイミングを見ながらボルバキアの感染実験に移行したいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度実施したマイクロインジェクションの手法を用いれば、ビロウドカミキリ由来のボルバキアをマツノマダラカミキリに定着させることは可能であることが示された。カミキリムシ類においてボルバキアを人為的に定着させた例はないことから、この結果は本課題において大きな前進である。また、マツノマダラカミキリの細胞培養においても、一部の培養株で増殖が確認され、増殖速度も速くなってきていることから、こちらも計画通り順調に進んでいると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
ボルバキアをマツノマダラカミキリに定着させることに成功はしたものの、その頻度はまだまだ低い。したがって、より効率的にボルバキアを保持するマツノマダラカミキリが得られるよう、インジェクションの方法を改良する予定である。また、マツノマダラカミキリの細胞培養については、増殖速度が上がってきたことから、状況を見ながらその細胞にボルバキアを感染させる実験を行う予定である。
|