2019 Fiscal Year Annual Research Report
Relationship between acorn masting and rodent population fluctuation
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19H03005
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
島田 卓哉 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10353723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 隆 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (00183814)
佐藤 淳 福山大学, 生命工学部, 准教授 (80399162)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 野ネズミ / 堅果豊凶 / DNAメタバーコーディング / 利用可能窒素量 / 個体数変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
堅果の豊凶は、森林生態系のみならず人獣共通感染症の流行にまでおよぶ広範な連鎖的影響を引き起こす。連鎖的影響の鍵となるのは堅果と野ネズミとの相互関係である。本研究では、人口統計学的解析と食性解析に基づく栄養学的アプローチによって堅果の豊凶が野ネズミ個体群に与える人口学的な影響を解明する。 岩手調査地について、コナラ堅果生産量とアカネズミの個体群動態との関係を自己回帰モデルを用いて解析した。その結果、堅果豊作の影響は、アカネズミの成体の冬期越冬率および秋の繁殖の活性化という形で現れることが判明した。春の繁殖への堅果豊作の影響は、個体数の面では検出されなかった。また、堅果の豊凶がアカネズミの成長と繁殖に与える影響を解明するために、春生まれの個体を対象に成長曲線解析を行った。離乳後初期(~6週齢)に個体識別されたメス21個体について、個体毎にロジステックモデルを適用し、成長曲線パラメターを推定した。その結果、堅果豊作翌年生まれの個体は早く成長を止め、小さい体重で性成熟することが明らかになった。資源が豊富な豊作翌春は、早い段階で繁殖に投資することがメスにとっては有利になるのだと考えられる。これらの解析から、堅果の豊凶がどのようなプロセスでアカネズミの個体群動態に影響するかが明らかになった。また、堅果は、アカネズミの生活史戦略に影響を及ぼしえる重要な資源であることが示された。 北海道試験地に生息する野ネズミ3種(アカネズミ、ヒメネズミ、エゾヤチネズミ)について糞を採取し、DNAメタバーコーディングによって採餌品目を明らかにした。堅果豊作年の10月には、いずれの種もミズナラを高頻度で採餌していたが、植物に関しては、採餌品目の多様性はアカネズミで最も低く、アカネズミがミズナラ(おそらく堅果)に強く依存していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度にあたり順調に研究体制を立ち上げることができ、福山大学・北海道大学との共同でDNAメタバーコーディングの解析を開始することができた。また、野外調査も予定通り実施できている。得られた成果の論文化が課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.長期野外調査にもとづく野ネズミ個体群の人口統計学的な解析 二調査地(岩手大学滝沢演習林、北海道大学雨龍研究林)において、標識再捕獲法による野ネズミの個体数調査を継続する。トラップ内に残された糞を回収し、DNAメタバーコーディングによる食性解明および利用可能窒素量測定のための試料とする。滝沢調査地においてはコナラ、雨龍調査地においてはミズナラを対象として堅果生産量の調査を継続する。両調査地で得られる野ネズミの個体数変動と堅果生産量に関する長期データを用い、堅果生産量を変数として組み込んだ個体群動態モデルを作成し、動物種毎に堅果生産量が個体数変動にあたえる影響を解明する。 2.野ネズミの糞を用いたDNAメタバーコーディングによる食性解析およびタンパクソースの解明 上記調査で採取した糞サンプルよりDNAを抽出し、標準的バーコード領域(動物:COI領域、植物:trnL、 rbcL、 matK領域)を次世代シークエンサーを用いて決定後、データベース検索によって採餌品目を特定する。その結果から、全食物中の堅果の利用割合を解明し、野ネズミ個体群動態における堅果の相対的重要性を評価する。昨年度に続き、本年度は雨龍調査地で得られたサンプルの分析を行う。並行して、滝沢調査地サンプルのDNA抽出を行い、DNAメタバーコーディング解析の準備を整える。 また、DNAメタバーコーディング分析が終了しているサンプルについて、利用可能窒素量の測定を行う。DNAメタバーコーディングの結果と糞中利用可能窒素量の結果を統計学的手法によって対比し、どのような食物がタンパク質のソースとして重要かを解明する。具体的には、繁殖の際のタンパクソースとして、堅果やシギゾウムシ類の幼虫などの重要性の評価を行う。
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