2019 Fiscal Year Annual Research Report
eQTL解析によるマツ材線虫病に対するクロマツの抵抗性機構の解明
Project/Area Number |
19H03007
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
平尾 知士 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 林木育種センター, 主任研究員 等 (90457763)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 孝治 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 林木育種センター, 主任研究員 等 (40415039)
岩泉 正和 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 林木育種センター, 主任研究員 等 (50391701)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | クロマツ / マツ材線虫病 / 抵抗性機構 / 遺伝子発現 / eQTL / 人工交配家系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マツ材線虫病に対するクロマツ(Pinus thunbergii)の抵抗性機構を遺伝子レベルで包括的に解明するために、遺伝学的な情報に遺伝子発現情報を加えたeQTL(expression Quantitative Trait Locus)解析を行うことで、遺伝子発現レベルで抵抗性形質に寄与する遺伝子群を特定し、さらに抵抗性遺伝子との制御関係をゲノム上で明らかにする。 今年度は、抵抗性の人工交配家系を対象としたeQTL解析を実施するため、人工交配から得られた1家系96個体を対象にして、線虫の接種検定とサンプリングを実施した。サンプリングでは、線虫接種前の針葉サンプルと線虫接種後1週目の針葉サンプルを収集し、計192サンプルについてその全RNAの抽出を行った。接種検定については、個体あたり約3,000頭の線虫を接種するとともに、接種後1週目から10週目まで指数評価による形質(病徴)の評価を行った。接種検定の結果では、10週目における評価では健全個体と枯死個体は55個体と41個体となったことから、少数の主働遺伝子が関与している可能が示唆された。 eQTL解析に使用する各個体の遺伝子発現データについては、抽出したRNAをもとに次世代型高速シーケンサー(Illumina社Hiseq)を用いてRNAシーケンスを行った。シーケンスの結果、個体あたり35-40Mリードを取得し、遺伝子発現解析において十分なデータ量を収集した。さらに遺伝子発現量を算出するために、得られたシーケンス配列を現有のクロマツESTリファレンス配列にマッピングした結果、平均マップ率は約60%となり、当初の想定よりも低いマップ率であることが判明した。このことから、本研究で取得したRNAシーケンスのデータをもとにリファレンス配列を再度構築し、マッピングを含む遺伝子発現解析を進め、eQTL解析を実施する予定であ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マツ材線虫病に対する抵抗性に関して人工交配家系を対象としたeQTL解析を実施するにあたり、1家系96個体からの針葉のサンプリング、線虫の接種検定、さらに形質評価が完了した。さらに採取した針葉サンプルについては、線虫接種前及び接種1週目のサンプルから全RNAの抽出が完了し、次世代型高速シーケンサーを利用したシーケンス解析から、遺伝子発現解析を行う上で十分なデータが取得できた。本研究課題を遂行する上で、最もベースとなるデータが得られている点において、おおむね順調に進展していると言える。 一方で、eQTL解析を実施するにあたり、各個体の遺伝子発現量を算出するために、得られたシーケンス配列を現有のクロマツESTリファレンス配列(約2万3千EST)にマッピングした。その結果、その平均マップ率は約60%前後となり、当初の想定よりも低いマップ率であることが分かった。この比較的低いマップ率で遺伝子発現解析を実施した場合、抵抗性形質の発現に関与している重要な遺伝子を取りこぼす可能性が考えられることから、本研究で取得したRNAシーケンスのデータをもとにリファレンス配列を再度構築し、その適性を検証した上で、マッピングを含む遺伝子発現解析を進め、最終的にeQTL解析を実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
人工交配家系を対象としたeQTL解析については、再度、リファレンスを構築した上でマッピングを試み、それらの解析結果を検証した上で、遺伝子発現量を算出し、実際にeQTL解析を実施する。 一方で、遺伝的背景が未知の抵抗性個体群を対象にしたeQTL解析についても研究を進める。接ぎ木増殖によって得られた抵抗性個体群56クローンについて、線虫接種前の針葉サンプルを採取するとともに、サンプル収集後に線虫を接種する(個体あたり5,000頭程度を予定)。表現形質は1週間おきに接種後10週目まで形質(病徴)を評価するとともに、接種後1週目については針葉サンプルを採取する。 eQTL解析に利用する遺伝子発現データについては、収集した1週目の針葉サンプルから全RNAを抽出し、人工交配家系と同様に次世代型高速シーケンサー(Illumina社Hiseq)を利用してRNAシーケンスを行う。データ解析方法については人工交配家系と同様の流れで行うが、クローン毎に接種前から接種後1週目にかけて遺伝子の発現が変動した遺伝子を抽出した後、GWAS-eQTL解析を実施する。
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