2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H03010
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
市原 優 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10353583)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相川 拓也 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90343805)
升屋 勇人 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70391183)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒバ / 漏脂病 / エチレン |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒバはヒノキ科アスナロ属のヒノキアスナロの地方名で、青森県ではヒバ、石川県ではアテと呼ばれ、抗菌活性の高い有用樹種である。ヒバの天然分布は北海道から石川県の限られた地域に点在し、人工造林はヒノキのように全国的な植栽が無く、地域特産樹種として石川県能登半島や青森県などで造林されている。しかし、ヒバの人工造林では「漏脂病」(ろうしびょう)という病害が障害となっている。漏脂病は、ヒノキ漏脂病と同じCistella japonicaが病原菌とされ、人工造林では高率で発病する。その症状は、植栽後15年程度から樹幹の樹皮から樹脂が流出し、数年間流出が続いて樹幹変形してしまう病害である。しかし、漏脂病は記載から長年経過するにもかかわらず、その発病機構は明らかになっておらず、抵抗性品種や防除法が求められている。本研究では、発病率の異なるヒバ品種間での病理学的な比較により、個体レベルの抵抗性機構を解明する。また、強度間伐施業により無間伐林分に比べ低発病率の林分を作る実証実験に成功しており、この林分間の発病率の差異を利用して、林分レベルの発病率抑制要因を解明する。 本年度は、エチレン生成能の異なる菌株を接種源としてヒバクローン別の接種試験を実施する計画だったが、接種時期に出張ができなくなったため、実施できなかった作業を次年度に実施する。間伐処理によって発病率に差異が出ている間伐林分と無間伐の発病林分において、継続して発病率調査を行った結果、間伐林分で発病木が少数で維持されていたのに対して、無間伐林分では発病木が増加する傾向があった。Cistella菌の特異的検出プライマーを用いて、リアルタイムPCRによるヒバ樹皮のCistella菌定量法を確立できた。 Cistella菌についてヒバ由来株とヒノキ由来株の遺伝子を解析した結果、両者が別種として判別できたことから、Cistella菌の種の記載について今後検討を要する必要があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は個体の抵抗性機構解明と林分の抵抗性機構解明の2本柱で構成されている。2年目の研究計画は、個体の抵抗性機構については、病原菌のCistella菌について、接種試験を実施できなかった。一方で、Cistella菌の遺伝子解析により同一として扱われてきた菌株が別種である可能性を示唆したことから、菌株の生理条件を判断する重要な知見を得ることができた。林分の抵抗性機構については、森林での試験地設定を本課題の実施前から進めてきており、間伐処理の影響を継続して記録することができた。また、Cistella菌を野外サンプルから検出・定量する方法についても予定通り開発できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題は3年目も計画通りに推進する予定である。2年目に実施できなかったエチレン生成能の異なる菌株を接種源としたヒバ接種試験を実施する。しかし、本研究課題の2本柱で構成する課題は、いずれも他県のヒバが生育する森林における調査を含む。現在の新型コロナウイルス対応により年度中の作業内容が制限される可能性があるが、これまでの採取サンプルや移動せずにできる試験により対応する。
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