2019 Fiscal Year Annual Research Report
New approach to reveal heartwood formation: elucidation of temporally and spatially dynamics of autolytic enzymes that control cell death
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19H03014
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
半 智史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40627709)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
船田 良 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20192734)
粟野 達也 京都大学, 農学研究科, 助教 (40324660)
高田 直樹 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 森林バイオ研究センター, 主任研究員 等 (90605544)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 放射柔細胞 / 細胞死 / 心材形成 / ポプラ / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射柔細胞の細胞死過程における自己分解酵素の挙動を明らかにする上で、細胞死過程を詳細に理解することは重要である。本年度は、ドロノキ(Populus suaveolens)3個体から2019年9月に辺材から心材に至るまでの試料を採取し、核、デンプン粒、脂質粒、タンパク質、液胞の変化について、光学顕微鏡および透過電子顕微鏡で観察した。移行材では、紡錘形だった核が不定形に変形した後に凝縮した。脂質粒に関しては、移行材より外側の辺材と比べて量が減少していたものの、大きな球形の脂質粒がすべての放射柔細胞内に存在していた。デンプン粒は移行材より外側の辺材では多量に存在していたが、核の変形が観察される前の段階ですでにほぼ消失していた。このことから、デンプン粒は細胞内容物が分解される前に心材成分の生合成のために消費されたと考えられる。大きな液胞は移行材以外では観察されなかったことから、これらの液胞は細胞死に関係している可能性がある。また、細胞質基質が移行材より外側の辺材に比べてオスミウムでよく染色されている様子が観察された。この現象は、フェノール性の物質を多く含む心材成分が移行材において生合成されていることと関係していると推察される。 加えて、自己分解酵素の機能解析のため、これまでの解析から放射柔細胞の細胞死に関わると考えられる自己分解酵素遺伝子を破壊したゲノム編集個体を作出する必要がある。本年度は、交雑ポプラ(Populus tremula x tremuloides)を用いて自己分解酵素のゲノム編集個体を作出し、育成を行った。 さらに、心材形成過程における自己分解酵素の機能解析のためには、ゲノム編集を行った交雑ポプラを用いて人為的な心材形成を誘導することが有効である。本年度は、交雑ポプラの挿し木を用いて誘導条件の検討を実施したが、人為的な心材形成の誘導には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射柔細胞の細胞死過程における自己分解酵素の挙動を明らかにする上では、細胞死過程を詳細に理解することが重要であるが、本年度に実施したドロノキ放射柔細胞の細胞死過程の解析により、主に光学顕微鏡レベルでの変化について明らかにすることができた。加えて、自己分解酵素の機能解析のため、これまでの解析から放射柔細胞の細胞死に関わると考えられる自己分解酵素遺伝子を破壊したゲノム編集個体を作出する必要があったが、本年度にゲノム編集個体の作出を終えている。 上記の理由から、進捗状況について概ね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、放射柔細胞の細胞死過程を光学顕微鏡での解析を中心に進めたため、今後は透過電子顕微鏡による液胞を始めとした細胞小器官の変化について解析を進める。また、心材形成において重要な放射柔細胞の細胞死と心材成分の沈着の関係について明らかにするため、自家蛍光を用いたスペクトルイメージングによる解析を実施する。さらに、放射柔細胞の細胞死過程における自己分解酵素の局在を明らかにするため、自己分解酵素の抗体を用いた免疫標識を実施する。加えて、今後はゲノム編集個体の表現型の解析を実施するとともに、交雑ポプラを用いて人為的な心材形成を誘導する条件を明らかにする。
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Research Products
(9 results)