2019 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティックをキーワードにした、木材腐朽菌の基礎および応用研究の新展開
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19H03017
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中沢 威人 京都大学, 農学研究科, 助教 (80608141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 正弘 京都大学, 農学研究科, 准教授 (40303870)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リグニン / 木材腐朽 / 腐朽菌 / きのこ / 担子菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒラタケにおいてccl1遺伝子破壊株を作成したところ、H3K4diMeおよびtriMeの修飾レベルの低下が観察された。この破壊株では、リグニン分解系酵素遺伝子の転写の変動はみられなかったが、リグニン分解不全変異株で転写活性化した遺伝子の幾つかが転写活性化していた。ccl1破壊株およびhir1破壊株(リグニン分解不全化株)を用いてChIP解析を行った結果、これらの多糖分解酵素遺伝子の5'上流領域のH3K4diMeレベルの変動に相関が観察された。このことからは、一部の多糖分解酵素遺伝子の転写活性化に5'上流領域のH3K4diMeが関与していることが示唆される。 ヒラタケをブナ木粉培地上で培養した場合について、顕著なリグニン分解能低下の原因遺伝子のうち2つ(pex1およびgat1)について、C. subvermisporaのこれらに相当する遺伝子(Cspex1およびCsgat1)をCRISPR/Cas9を用いて単独変異導入を行った。現時点でそれぞれ複数ずつの単独遺伝子変異株を取得し、ブナ木粉培地中のリグニン分解系への影響を評価した。その結果、両遺伝子変異株ともにリグニン分解量の減少はみられたものの、Cspex1遺伝子変異では顕著というほどではなく、長期培養(20日間)では野生株と同程度にリグニン量が減少していた。一方、ヒラタケの変異株(5種類)の中でも、最もリグニン分解量および分解酵素遺伝子の転写が低下していたgat1に関しては、C. subvermisporaでも顕著なリグニン分解量の低下および酵素遺伝子の発現低下が観察された(ただし、現時点ではn=1のRNA-seqの結果である)。今後、多糖分解酵素遺伝子が転写活性化しているかも含めて、さらなる解析を行う予定である。 ヒラタケにおいて、いくつかのPKS遺伝子を発現させ、単純な低分子化合物の生産が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね申請書通りの当初計画で進捗している。概要に書ききれなかったイネの遺伝子改変も、分担者によって作成および解析が進んでおり、実験サンプルを確保した後にヒラタケによる分解試験へと進める予定である。しかし、全てが順調に進んでいるわけではなく、オオウズラタケの形質転換には成功していない。そのため、進捗状況の自己評価は(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒラタケに関しては、H3K4メチル化以外のヒストン修飾関連遺伝子の破壊株を作成し調査する予定である。また、ゲノムワイドでのプロファイリングも進めていく予定である。 C. subvermisporaに関しては、RNA-seq解析数を増やすことで再現性を確認する。また、Csgat1およびCspex1遺伝子変異が多糖分解系酵素遺伝子の転写を活性化するかを調査し、申請書中の研究計画の分岐(C. subvermisporaでもChIP解析を行うのか、それとも転写因子が直接制御する下流遺伝子を比較解析するのか)の判断を行う。 そのほかにも、オオウズラタケおよびカワラタケの形質転換系の構築や細胞壁組成を改変したイネサンプルを大量に調製し、ヒラタケによる分解試験へと進んでいく予定である。
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