2020 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティックをキーワードにした、木材腐朽菌の基礎および応用研究の新展開
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19H03017
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中沢 威人 京都大学, 農学研究科, 助教 (80608141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 正弘 京都大学, 農学研究科, 准教授 (40303870)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | キノコ / 腐朽菌 / リグニン / セルロース / 木質 / 担子菌 / ヒストン |
Outline of Annual Research Achievements |
菌類において、K4のメチル化は、K36のメチル化などとも連動・連携し、転写調節に関与していることが報告されている。本研究の昨年度までの結果を踏まえて、K4, K9以外の化学修飾の影響も調査することとした。 ホモロジー検索より、H3K36メチル化酵素をコードすると考えられるset2遺伝子、その脱メチル化酵素をコードすると考えられるkdm4遺伝子について、単独遺伝子破壊株および高発現株の作出を試みた。結果、kdm4遺伝子破壊および高発現株、set2高発現株の作出に成功した。これらの株をブナ木粉培地で培養し、リグニンおよびセルロース分解能の調査およびRNA-seqによる転写蓄積量の解析を行った。現在までに、kdm4破壊株におけるセルロース分解系の不活性化が明らかとなった。その他の株については、現在表現型などを調査中である。 また、ヒストンH3中の化学修飾されるアミノ酸置換も行った。ヒラタケゲノム上には、ヒストンH3をコードする遺伝子が3つ予測されているが、RNA-seqデータに基づいて、最も発現量が高いヒストンH3遺伝子について、K4, K9, K14, K27, K36のアミノ酸をAに置換した株を作成した。方法としては、ku80破壊株である20b株に対して、ハイグロマイシン耐性形質転換を行い、相同組換えによって塩基置換を行った。結果、これらの塩基(ヒストンH3のアミノ酸)配列の変異株を作出できた。今後は、これらの遺伝子変異株および破壊株について解析を進めていく予定である。 また、ヒラタケ野生株およびリグニン分解不全株を、ブナ木粉でなく稲わら(コシヒカリ)上で培養した際のリグニン分解能の比較およびRNA-seq解析も行った。 さらに、昨年度までに分担者によって作出および解析された植物細胞壁成分改変のイネ系統より、稲わらを作成し、ヒラタケの培養試験を行う準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多少の予定変更はあったものの、概ね申請書通り進んでいる。一部に関しては、当初の予定以上の成果も得られた。研究成果も原著論文の形で順調にアウトプットされている。 ただし、天然物の異種生産については、コロナ禍による研究時間不足などもあり、今年度に新たな進捗が得られなかった。そのため、自己評価は(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 昨年度までに作成した、ヒラタケのヒストン修飾関連変異株の解析の続きを行う。具体的には、ヒストンH3のK4A, K9A, K27A, K36A変異株について、木質分解酵素遺伝子群の発現パターンを調査する。また昨年度の結果にもとづいて、推定上のH3K36メチル化酵素をコードする遺伝子(kdm4)の高発現株および破壊株における多糖分解系酵素遺伝子群の転写変動を引き起こすメカニズムを解明する。 2. 昨年度の結果をふまえて、リグニン分解不全変異株およびccl1破壊株において観察された、多糖分解系酵素遺伝子群の活性化を引き起こすと考えられるシグナル経路について、より詳細な解析を行う。 3.昨年度までに作成した植物細胞壁改変イネを大量に栽培し、稲わらをさらに作成する。これらのサンプルを基質としてヒラタケを培養し、木質分解酵素遺伝子群の発現への影響を調査する。 4. ブナ木粉培養サンプルを用いてChIP-seqを行う
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