2020 Fiscal Year Annual Research Report
Manufacturing of quasi-noncombustible plywood on the real line and developing of price competitive self-charring stop type fire resistant wooden materials and joints using this plywood
Project/Area Number |
19H03020
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中村 昇 岡山大学, 環境生命科学学域, 特任教授 (30180384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板垣 直行 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (00271891)
栗本 康司 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 教授 (60279510)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 燃え止まり / 赤熱 / 灰分 / 耐火試験 / 難燃薬剤注入単板 |
Outline of Annual Research Achievements |
建築分野での木材利用は、これまで住宅を中心に行われてきたが、世界的に中大規模建築への利用が盛んに行われるようになって来ており、わが国も例外ではない。木造の最大の魅力はそのテクスチャーであり、木現しの中層木造が期待されているが、都市部防火地域の中層木造では燃え止まること、換言すれば自消が要求される。そのため、これまで耐火部材として不燃薬剤を注入した材との複合などが行われてきたが、このような処理を行うと、コスト高となり、鉄筋コンクリート造や鉄骨造に対し、競争力がなくなってしまう。そこで、ロールプレスを用いて単板に難燃薬剤を注入し、乾燥した後合板を製造し、さらに、その難燃合板を燃え止まり層として用いることで、安価な燃え止まり型木質耐火部材を製造することを試みた。スギ単板を難燃薬剤にドブ漬け後、ロールプレスを用いて注入すると、100kg/m3前後難燃薬剤が注入できることが分かった。注入後乾燥し、フェノール樹脂を用いて、単板を接着し合板を製造した。製造した合板からコーンカロリーメータ試験用の試験体を採取し、10分間の発熱量を測定したところ、ほぼ8MJ/m2以下であり、準不燃材料の基準をクリアしていることが分かった。これを燃え止まり層とした燃え止まり型木質耐火部材を作成し、1時間耐火試験を行ったところ、燃え止まったことが分かった。また、真に環境に優しい木質耐火部材の開発を目指し、灰分量が少ないと思われる、長野県南佐久郡産、福島県南会津産および岩手県岩泉産のカラマツ集成材のみの2時間耐火試験を実施した。福島県南会津産カラマツは一部に赤熱が残っていたが、この赤熱は局所的であるが故に、いずれ燃え止まるのではないかと思われた。長野県南佐久郡産および岩手県岩泉産のカラマツ集成材については、赤熱が止まらなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
荷重支持部に相当する断面は幅200mm×せい300mmのスギ集成材で、その周りに厚さ70mmの難燃薬剤を注入した合板を挿入し、さらに厚さ20mmのスギ集成材を配置している。長さは5500mmである。試験体内部の温度を測定するため、長さ方向に5か所、各々5つ、合計25の熱電対を設置した。1時間の加熱後炉内に放置した。加熱終了後約500分後、すべての熱電対は木材の炭化温度260℃に達しておらず、また、すべて温度が下がっていることが分かったので、脱炉した。脱炉時に試験体を確認したところ、赤熱は残っておらず、燃え止まったことが確認できた。カラマツ集成材試験体は、荷重支持部に相当する断面は幅315mm×せい600mmで、その周りに厚さ120mmの集成材を配置し、長さは5500mmである。福島県南会津産カラマツ集成材については、2時間加熱後炉内に放置していたが、682分後25か所すべての熱電対の温度が下がったか、小康状態になったので脱炉した。一部に赤熱が残っていたが、燃え止まるのではないかと考えられるほどの赤熱であった。岩手県岩泉産および長野県南佐久郡産カラマツ集成材は、2時間加熱後22時間炉内に放置したが、局所的に赤熱が続き、燃え止まらなかった。また、ベイマツ50体、カラマツ30体、ヒノキ15体、スギ7体、総計102体の試料に関する灰分を測定した。ベイマツ、カラマツの灰分が少なく、スギは圧倒的に多い。ヒノキは、それらの中間に位置することが分かった。ベイマツやカラマツに比べ、灰分量の多いヒノキで燃え止まった理由は、ヒノキ内部の灰分が比較的均一に分布しているのではないかと考えられる。一方、スギは、灰分の多い箇所が多く存在しているためではないかと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ベイマツやカラマツだけでなく、ヒノキでも燃え止まることが分かった。このように、一言で木材と言っても、樹種により燃焼の仕方がかなり異なっていると考えられる。何故、そのようなことが起こるのか、そうなる理由があるはずである。灰分は樹幹内を移動しているが、そのメカニズムは次のように考えられている。「経根吸収により樹体内へ取り込まれた金属元素(灰分)は、樹液とともに幹を上昇し、濃度勾配による拡散または放射組織を経由した能動的な輸送により、樹幹の内側に向かって移動する。自由水の連絡がなければ拡散は起こりにくいので、この過程は材の含水率に依存する。一般的に辺材含水率の高い針葉樹では、広葉樹に比べて辺材内での拡散が起こりやすいが、スギは例外的に辺材よりも心材で含水率が高く、心材内での拡散が容易である。」この現象が樹幹内で一様に生じているならば、灰分は均一に分布しているはずである。スギ材を高温乾燥材すると、心材抽出成分の木口から滲み出すが、同心円状ではなく偏っていることが分かる。このように、自由水が局所的に移動し難い箇所があり、そこに灰分が蓄積してしまうのではないかと推測している。この推測が正しければ、特にスギ材は自由水が移動し難い箇所が多いため、乾燥し難い理由とも整合する。これまでの耐火試験から、赤熱は局所的にしかに生じておらず、樹幹内で灰分はある箇所の凝集し、局在していると考えざるを得ず、このようなことを明らかにした研究はない。今後は、何故局在しているのか、そのメカニズムを解明する必要がある。
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