2020 Fiscal Year Annual Research Report
Study on manganese in otoliths of demersal fishes as an Indicator of hypoxia
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19H03025
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
片山 知史 東北大学, 農学研究科, 教授 (30224455)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 耳石 / 貧酸素 / マンガン / マコガレイ / 東京湾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、内湾に生息する魚類が貧酸素水に接しながら生活していること、および魚類の貧酸素環境履歴から内湾の貧酸素水動態を推定する手法を確立するために、貧酸素条件で底質から溶出するマンガンに注目する。飼育実験によって、マンガンの底質からの溶出、水中のマンガンの耳石への蓄積といったプロセスを明らかにする。そして、東京湾の底魚数種の耳石に含有するマンガンを年輪構造に沿って測定し、各個体の貧酸素水環境履歴(どの季節に貧酸素水域を利用したか)を推定する。これらの結果によって、耳石のマンガンが内湾の貧酸素水の指標として用いる有用性を確認することを目的とする。 室内飼育実験により、マンガンの底質からの溶出、水中のマンガンの耳石への蓄積といったプロセスを検討した。2019年度は、低酸素状態が海水中のMn濃度を増加させることを明らかにした。加えてBaが変動することも示された。したがって2020年度は、MnおよびBaの添加実験を行い、耳石への取り込みを定量化した。1)マコガレイ稚魚をさまざまなMn濃度(コントロール、30倍、50倍)、Ba濃度(コントロール、10倍、20倍)で約100日間飼育し、飼育水のMn濃度、Ba濃度とマコガレイ耳石の関係を調べた。Mn濃度の耳石半径に沿ったICPmsプロファイルは、Mn添加区で耳石Mn濃度も有意に増加しており、耳石Mnが貧酸素水という環境履歴の指標となることが確認された。一方、Ba添加区の耳石Ba濃度は有意に増加しなかった。天然海域のマコガレイについては、昨年の計測で東京湾内湾の個体の耳石Baに、増加が観察されたが、その要因については特定できなかった。飼育条件におけるマコガレイへのストレスと、耳石へのBa吸収の関係を明らかにする必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンプリング、飼育実験、東京湾および飼育実験によって得られたマコガレイの耳石の分析、解析が予定通り進行している。 予算の執行についても、計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画どおり、サンプリング、飼育実験、東京湾および飼育実験によって得られたマコガレイの耳石の分析、解析を行う。特に飼育実験については、飼育水中のMn濃度と耳石のMn濃度の相関関係を明瞭にするために、水温条件を設定して、飼育実験を行う。また東京湾の内湾域では、マコガレイ耳石におけるマンガン、バリウムの増加が確認されている。年輪と合わせて解析することにより、その増加の季節を推定する。耳石における微量金属の挙動と環境条件との関係を明らかにする。 最終年であるため、論文公表に注力する。
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