2020 Fiscal Year Annual Research Report
Genotypic diversity and phylogeography of harmful raphidophyte Chattonella in Southeast Asia
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19H03027
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩滝 光儀 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (50423645)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 和也 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (00821109)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 有害藻類 / 赤潮 / ラフィド藻 / シャットネラ / 系統分類 / 微細構造 / 分布 / 東南アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
東南アジア産有害ラフィド藻Chattonellaの分布,種と個体群レベルでの識別,そして現在までの漁業被害の把握を目的として,東南アジアを中心とした現地調査による同種培養株の入手,形態観察,分子系統解析,そして国際ワークショップ等を介した出現情報の共有を継続している。2019年12月にフィリピンで開催したWESTPAC-HAB国際ワークショップで共有した情報に,東南アジア6ヶ国,東アジア4ヶ国における現地語を含めた文献調査を行うことで,Chattonellaの出現と漁業被害に関する情報を追加した。さらに,現在までの現地調査で確認した出現情報を加え,東南アジアを中心としたChattonellaの分布情報を1989年までと2019年までの時系列にまとめた。東南アジアでは1989年までに3例のみのChattonellaの出現情報が確認されていたが,2019年までには8件の漁業被害を含む30例以上の出現が6ヶ国から確認された。Chattonella属内のC. marinaとC. subsalsa系統群については作成できた培養株の系統解析を進めるとともに,系統地理情報を整理することで,東アジアからは現在までにC. marina系統群のみの出現が確認され,東南アジアにはC. marinaとC. subsalsaの両系統群の分布が分かってきた。ここでまとめた系統地理情報を過去の被害状況を照らし合わせると,東南アジア地域ではC. subsalsa系統群が漁業被害に関わってきたことが推察された。形態の染色観察からは,日本に出現するC. marina系統群の細胞からもオーボエ様の粘液胞の射出が初めて確認され,この形質ではC. marinaとC. subsalsa系統群の細胞を識別できないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東南アジア6ヶ国(インドネシア,マレーシア,フィリピン,シンガポール,タイ,ベトナム)と東アジア4ヶ国(中国,日本,韓国,ロシア)における有害ラフィド藻Chattonellaの出現と漁業被害に関する情報を各国研究協力者から入手することで,1989年までと2019年までの時系列で把握することができた。Chattonella属内の系統群識別を目的として,現在までにインドネシア産2株,日本産4株,マレーシア産6株,シンガポール産2株,フィリピン産4株,ロシア産1株,タイ産1株のDNA配列(LSU rDNAとITS領域)を決定した。GenBankの登録情報を加えた比較によりアジア産Chattonellaの系統的位置を明らかにすることで,東アジアにはC. marina系統群のみが,東南アジアにはC. marinaとC. subsalsaの両系統群が分布することが分かってきた。C. subsalsa系統群の東南アジアにおける分布が特定の地域(現在までの解析ではフィリピン,シンガポール,タイ)に限定される状況が見えてきたことは,今後,より詳細な分布解析や個体群レベルでの移動を考察する上で重要な情報となる。これまでに得た東南アジアにおけるChattonellaの系統地理情報を過去の漁業被害報告と比較することで,東アジアで大きな漁業被害を引き起こしてきたC. marina系統群だけでなく,C. subsalsa系統群も東南アジアで漁業被害に関わってきたことが推察された。形態観察からは,ニュートラルレッド染色により,オーボエ様の粘液胞の射出が日本産C. marina系統群の細胞からも初めて確認された。国際ワークショップは2021年3月にオンラインで開催し,9ヶ国から研究者が参加することで有害藻類の出現情報を共有した。
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Strategy for Future Research Activity |
東南アジア沿岸域における赤潮原因ラフィド藻の採集を継続し,単藻培養株を作成する予定であったが,次年度も東南アジアを訪問しての現地調査実施が困難であることが予想される。また,国際共同研究においても国際学会の開催が未定またはオンラインでの実施が予想されている。東南アジアにおける有害藻類研究者のネットワークの強化はオンラインでの情報共有を中心に進める。次年度も日本と東南アジアにおける感染症の状況を見ながら柔軟に対応するが,研究の推進方策としては情報とりまとめと室内実験を中心に計画している。これまでに収集した東南アジアにおける有害ラフィド藻Chattonellaの出現と被害記録に関しては,まとめて論文を作成する。研究室での実験が可能である場合には,現在までに作成した培養株を用いて増殖特性に関する実験を予定している。現在までに東南アジア沿岸域からはC. subsalsa系統群,C. marina系統群に加え新規系統群の出現を確認してこれらの培養株を維持できているため,どの系統群が東南アジアの高水温・高塩分環境に適応しているかを増殖試験の結果に基づいて推定する予定である。培養株の追加が可能であった場合には分子系統解析も併せて実施し,系統的位置を明らかにする。
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[Presentation] Phylogeny and distribution of Chattonella marina complex and C. subsalsa in Southeast Asia2021
Author(s)
W.M. Lum, G. Benico, C.P. Leaw, S.C.Y. Leong, P.T. Lim, Muawanah, A. Rachman, K. Takahashi, S.T. Teng, H. Thoha, A.T. Yniguez, M. Iwataki
Organizer
日本藻類学会第45回大会
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