2020 Fiscal Year Annual Research Report
Plasticity in life cycle, host-specificity and physiological features of caligidae
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19H03032
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大塚 攻 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (00176934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒川 修 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (40232037)
浅川 学 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (60243606)
田角 聡志 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 准教授 (90359646)
近藤 裕介 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (90848087)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ウオジラミ / 生活史 / クチクラ / 吸盤 / テトロドトキシン / カイアシ類 / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)外来種と考えられるゴウシュウウオジラミは中間宿主を持つと考えられていたが,日本産マダイの体表から感染期以降の全ステージが発見され,通常のウオジラミ類と同様に一宿主性である可能性が示唆された.また,宿主が原記載以来不明であり,成体がプランクトン中からしか発見されていなかったウキウオジラミの宿主がサッパ,コノシロであることが新たに判明した.瀬戸内海ではプランクトンサンプルに成体が出現する季節は極めて限定的で秋から初冬であった. (2)ウオジラミ類の宿主への付着行動を高速カメラで観察し,吸盤を構成するクチクラの微細構造を電子顕微鏡によって解析し,筋肉配置を共焦点レーザー顕微鏡で調査した.ルヌール(補助吸盤)の内部のクチクラ構造は極めて特殊な液晶エラストマー様であり,付着の初期段階において重要であることが判明した.頭胸部と第3胸脚から構成される吸盤を機能させるには,第2胸脚外肢裏面と吸盤周囲のキチン膜内部には運動の方向性を限定できる内クチクラの構造がある.カイアシ類の第2胸脚の単純な前後運動によって起こされた水流をこのクチクラの特殊構造を通して吸盤の付着エネルギーに転換している. (3)免疫染色法によって,クサフグなどに寄生するフグウオジラミの感染期(宿主付着前)の体内にはテトロドトキシン(TTX)が全く蓄積していないが,次の付着期カリムス期では筋肉,消化管,神経にTTXの蓄積が起こることを明らかにした.消化管内にはTTXを含む宿主の粘液と考えられる物質がしばしば見られ,摂食によってフグウオジラミの体内に宿主由来のTTXが蓄積することが推測された.ただし,カリムス期の各組織におけるTTX蓄積は個体差があることが初めて明らかになった. (4)寄生性カイアシ類などの新タクソンを国際学術雑誌に記載した. (5)TTX産生菌をヒモムシ類Cephalothrix simulaから1株分離した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
外来種と考えられるゴウシュウウオジラミの生活史の解明にはtype locality(オーストラリア)を訪れて調査する必要性があると予想していたが,導入先の日本においては養殖マダイで生活史が完結していることが判明した.したがって,宿主上でカリムス期の出現頻度が極めて低い理由を検証することに今後の焦点が絞られた.また,ウキウオジラミの宿主もサッパ,コノシロであることが判明したので,宿主の行動との関連性を調査する段階になった.ウオジラミ類の宿主への付着メカニズムはほぼ完全に解明でき,これをまとめた論文が本年度に国際学術雑誌に受理された.
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Strategy for Future Research Activity |
今後,クサフグ,ヒガンフグ,コモンフグに寄生するフグウオジラミの生理・生態の特異性に関する研究を重点的に行う.宿主認識に関与する遺伝子の同定のため,昨年度実施した感染前のノープリウス期、コペポディド期のトランスクリプトーム解析に加えて,本年度は感染後のカリムス期のトランスクリプトーム解析も行った.また,TTX蓄積関連分子の同定へ向け,抗TTXモノクローナル抗体を利用したTTX結合性タンパク質の同定を試みた.遺伝子ノックダウン方法の確立へ向け,脱皮関連遺伝子3つのクローニングを行った.これらの結果を精査して次年度以降の研究計画を実施する.さらに,寿命が1年ほどの魚類(シロウオ)にもウオジラミ類の未記載種の寄生が見られたことから,本種を国際学術雑誌に記載すると同時に生活史の解明に取り組む予定である.ウキウオジラミの生活史解明も瀬戸内海で試みる.
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Research Products
(15 results)