2019 Fiscal Year Annual Research Report
魚類における新奇腸管キチンナノファイバー膜生体防御機構の学術的基盤整備
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19H03042
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邊 壮一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20507884)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 魚類 / キチン / 生体防御 |
Outline of Annual Research Achievements |
真骨魚におけるキチン膜の存在普遍性を可視的に検討するため、各魚種の消化管の樹脂包埋試料について蛍光標識キチン結合プローブによる検出法を確立した。これまでの樹脂包埋によるキチン膜染色は脱樹脂を伴う手法によりなされており、その過程で膜が試料切片から失われる可能性も排除できないため、まずは試料としてティラピア消化管を用いて、脱樹脂を行わない染色法に適した樹脂の選定をおこなった。選定された手法を用いることでニジマスなどの消化管でもキチン膜が存在することが示された。なおパラフィン切片では膜が試料から剥離して失われたため検出できなかった。ただし脱樹脂を行わない染色ではいずれも組織の自家蛍光が顕著であり、キチン膜が肥厚しない魚種の場合には検出が困難となることが懸念された。また固定液についても検討し、粘液の構造を保持するために使用されることの多いmethacarn固定液ではキチンの検出感度が著しく低下し、Carnoy固定液を用いる必要があることも示された。上記の樹脂包埋法で見られた問題を解決するための検討をおこない、キチン検出感度が極めて優れたハイドロゲル包埋法を新規に開発した。このことにより形態保持に優れた樹脂包埋と組み合わせた効果的な研究遂行が可能となった。キチン膜の微細構造についても検討を実施し、ティラピア以外においても明瞭なメッシュ構造を持つ膜構造が確認された。またティラピアにおいて消化管部位ごとのキチン膜の構造を検討した結果、腸最前部では腸上皮直上に単層キチン膜が存在することが示され、その孔径は数十nm程度とこれまで確認されていた構造と比較して極めて微細であることが示された。キチン膜は腸後部に移行するにつれて重層化し、その孔径は大きくなっていくことも明らかとなり、その形成メカニズムが腸の部位により異なる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初計画に沿った形で研究が進展した。広範な魚種における検討は未だ途上ではあるが、既存手法の問題点を解決した新規技術を自ら開発したため、今後の検討について加速することが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
ハイドロゲル包埋法を積極的に活用するとともに、キチン生合成経路関連遺伝子群の同定についても進めることで、その普遍性を形態学的観点に加えて分子生物学的観点からも検討を進める。
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