2020 Fiscal Year Annual Research Report
魚類における新奇腸管キチンナノファイバー膜生体防御機構の学術的基盤整備
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19H03042
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邊 壮一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20507884)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 魚類 / キチン / 生体防御 |
Outline of Annual Research Achievements |
真骨魚におけるキチン生合成経路に関与する遺伝子群を明らかにするため、候補となりうる関連遺伝子を網羅的に検索し、腸管において顕著な発現を示すものについて同定をおこなった。その結果、これまで明らかとなっているキチン合成酵素遺伝子chs1と発現パターンが極めて類似した酵素遺伝子群が見出された。またこれらいくつかの発現部位をin situ hybridizationにより検討したところ、chs1と同様に腸管上皮細胞に発現することが示された。これらの結果からキチン生合成経路は粘液多糖やタンパク質糖修飾のためのヘキソサミン合成経路から相当程度独立した系であることが示唆された。また、摂餌物に含まれるキチン由来のN-アセチルグルコサミンをキチン生合成に利用する経路の存在も示唆された。樹脂包埋法についても前年度に引き続き検討を継続しており、キチン検出能を高い状態に維持することで、自家蛍光の問題を低減できる手法を選定することができた。当該包埋手法により、キチン膜についてより詳細な機能形態学的解析が可能となった。加えてハイドロゲル包埋法によるキチン膜含有切片におけるキチナーゼ処理を実施したところ、位置情報を保持したままキチンを特異的に分解可能であることも示され、キチン膜内部における粘液多糖の局在状態を観察することが可能となる技術を確立できた。真骨魚におけるキチン膜ベースの成体防御機構の存在普遍性を検討するためにchs1のin silico検索および系統樹解析を実施したところ、一部の例外を除き、当該遺伝子を有していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
真骨魚におけるキチン膜形成過程の大きな部分であるキチン生合成経路に関与する酵素遺伝子群について相当程度同定できた。加えて各種機能形態学的解析手法についても大きな進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
継続してキチン生合成経路関連遺伝子群の同定を進めるとともに、Chs1分子の機能解析系の確立や機能阻害系の検討を通して、生体におけるキチン膜の機能を多角的に検討を進める。またキチン膜に物理的バリア以外の機能を付与する結合分子や化学修飾についても探索を行う。
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