2019 Fiscal Year Annual Research Report
| Project/Area Number |
19H03048
|
|---|
| Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
|---|
Principal Investigator |
山本 洋嗣 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (10447592)
|
|---|
| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Strussmann C.A. 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (10231052)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
| Keywords | 環境依存型性決定機構 / 遺伝型性決定機構 / 環境ストレス / トウゴロウイワシ / TSD / amhy |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
魚類の性は「遺伝的要因」と「環境要因」の連続的バランスによって決定されるが、その共在の分子機構はほとんど未解明である。本研究は、「遺伝的性決定」と「環境依存的性決定」の２つの性決定機構の特徴を完全に併せ持つモデル魚を用い、その共在機構の全容解明を目指すものである。本年度はトウゴロウイワシ目魚類ペヘレイを用い、課題１「性決定に与える種々の環境要因の影響調査」、課題２「性決定遺伝子および性決定関連遺伝子の発現制御機構の解明」、課題３「ゲノム編集技術を用いた遺伝的性決定因子の機能破壊と環境依存型性決定機構への影響調査」に取り組んだ。課題１では環境要因として、個体密度が本種性決定に与える影響を調査した。その結果、高密度により、コルチゾールおよび11-ketotestosterone（11-KT)が上昇することで雄化が促進される可能性が示唆された。課題２では、雄化の鍵となるamhyおよびamha、雌化の鍵となるcyp19a1aのプロモーター領域を単離し、レポーターアッセイのためのコンストラクトを作成した。さらに、培養細胞（魚類表皮細胞株）を用いたレポーターアッセイを行い、amha遺伝子の発現制御機構を調査したところ、cortisolおよび11-KTがamha発現を促進させる可能性が示唆された。課題３では、遺伝的および温度依存的性決定の共在の鍵であると考えられるamhyおよびamhaの両遺伝子の機能破壊実験を行うための準備段階として、色素胞凝集に関与するslc45a1遺伝子を標的遺伝子とし、ゲノム編集技術（CRIPR-Cas9）によりその機能破壊を行うことで、ペヘレイにおけるマイクロインジェクション技法の確立およびプロトコルの最適化を行なった。その結果、本種において高効率にアルビノ個体の作出することができた。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は予定していた３つの研究課題、（１） 性決定に与える種々の環境要因の影響調査、（２）性決定遺伝子および性決定関連遺伝子の発現制御機構の解明、（３）ゲノム編集技術を用いた遺伝的性決定因子の機能破壊と環境依存型性決定機構への影響調査を開始した。（１）に関しては、環境要因として、まず飼育密度がペヘレイ性決定へ与える影響を調査するための飼育試験を行った。その結果、高密度飼育によりコルチゾール-11KT系を介した雄化が誘導される可能性を示すことができた。（２）に関しては、雄化および雌化の鍵となる３遺伝子amhy, amha, cyp19a1aのプロモーター領域を組み込んだコンストラクトを作成し、魚類表皮細胞由来の培養細胞を用いてamha遺伝子のレポーターアッセイを行い、コルチゾールおよび11-KTの両ホルモンがamha遺伝子発現を促進させることを明らかにした。現在、残りの２遺伝子についてのレポーターアッセイを行っている。（３）に関しては、ペヘレイにおいてゲノム編集技術が未確立であったため、まず本種を用いた遺伝子導入技法の確立およびプロトコルの最適化に取り組んだ。その結果、安定して標的遺伝子の機能破壊が可能となったため、amha遺伝子を標的遺伝子として機能破壊実験を開始した。以上、予定していた3課題について概ね計画通り着手できている。
|
| Strategy for Future Research Activity |
令和2年度も引き続き、（１） 性決定に与える種々の環境要因の影響調査、（２）性決定遺伝子および性決定関連遺伝子の発現制御機構の解明、（３）ゲノム編集技術を用いた遺伝的性決定因子の機能破壊と環境依存型性決定機構への影響調査、の３課題に取り組む。（１）に関しては、新たな環境要因として塩分に着目し、本要因がペヘレイの性決定機構にどのような影響を与えるのかを明らかにするため、異なる塩分条件下で孵化直後の稚魚を用いた飼育試験を開始し、定期的に採取したサンプルを用いて内分泌学的（コルチゾール、11-KT等の量的変動）、分子生物学的（性分化関連遺伝子発現の変動）視点から複合的に塩分と性の関係性を調査する。（２）に関しては、昨年度に作成したamhyおよびcyp19a1aの各プロモーター領域を組み込んだコンストラクトおよび魚類標細胞由来の培養細胞を用いたレポーターアッセイを行い、コルチゾールや11-KTといった本種の性分化の鍵となる各種ホルモンがこれら遺伝子を制御するのか否かを明らかにする。（3）に関しては、継続してamha遺伝子を標的とした機能破壊実験を行うとともに、amhy遺伝子を標的としたガイドRNAの設計・調整とプロトコルの最適化に取り組む。
|
