2019 Fiscal Year Annual Research Report
持続可能な風評対策と放射性物質検査体制に関する実証的研究ー行動経済学による接近
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19H03060
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
下川 哲 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (40767224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須網 隆夫 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (80262418)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 限定合理性 / 風評被害 / 福島産農産物 / 放射性物質検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、風評被害に関する新たな視点として「当初に誤解や偏見がなくても風評被害は発生しうる可能性」を実証的に検証するため、福島県産農産物の風評被害に注目する。また、このような可能性を考慮に入れた上で、福島県全体にとって最適な風評対策について考察する。原発事故から9年、たとえ当初は福島県産に対する誤解や偏見がなかった人でも、「時間の経過とともに風評被害を引き起こす可能性」や「周囲に流されてとった行動から、事後的に福島県産への偏見をもつ可能性」を検証する。
令和1年には、まず「当初に誤解や偏見がなくても風評被害は発生しうる可能性」について人間の限定合理性(特に認識の慣性)の視点から概念的に整理し、これまでの福島産農産物の需要に関する実証研究との整合性について検証した。検証結果は、5月に開催された国際ワークショップ(Institutional Study and Implications to Inductive Game Theory)において発表された。また9月には、福島県双葉郡において、住民、事業者、役所に対する聞き込み調査を実施した。聞き込み調査の結果は報告書にまとめ、調査協力者に送付した。加えて、調査の一環として実施した「リスク選好に関するパイロット実験」の結果を、11月に開催された第23回実験社会科学カンファレンスにおいて発表した。さらに、表情解析ソフトなどを購入し、表情や視線から福島産農産物に対する評価を測るラボ実験の内容や実施方法について準備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)これまでの福島産農産物の需要に関する実証研究と新たな概念モデルとの整合性について、国際ワークショップで国内外に発表する機会を得た。 (2)福島第一原発事故による影響がもっとも大きかった地域である福島県双葉郡において、幅広い関係者にたいして聞き取り調査を実施し、現時点での現地の声をより明らかにできた。また、調査報告書を協力者に郵送することで、調査結果の現地への還元および共有に努めた。 (3)現地聞き取り調査におけるリスク選好に関する実験結果について、国内カンファレンスで公表する機会を得た。 (4)ラボ実験に必要な機材(フェイスリーダーなど)を購入し、今後の実験の準備を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、表情や視線から「福島産農産物に対する消費者の評価」および「情報提供の影響」を計測するラボ実験の内容や実施方法について準備を進める。また、ラボ実験だけでなく、現地調査でも使用できる視線トラッカーを購入し、現地調査の準備も進める。令和2年9月に福島県双葉郡における聞き取り調査を再度実施する予定であったが、新型コロナの影響もあり、実施時期を調整中。
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Research Products
(2 results)