2019 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on evaluation methods and systems of EU rural development
Project/Area Number |
19H03068
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Research Institution | Policy Research Institute, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries |
Principal Investigator |
飯田 恭子 農林水産省農林水産政策研究所, その他部局等, 研究員 (70337228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市田 知子 明治大学, 農学部, 専任教授 (00356304)
須田 文明 農林水産省農林水産政策研究所, その他部局等, 研究員 (70356327)
浅井 真康 農林水産省農林水産政策研究所, その他部局等, 研究員 (60747575)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | EU / CAP / 農村振興 / LEADER事業 / 評価 / ローカル・アクション・グループ / ボトムアップ / コレクティブ・ラーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象は、地域の多様な主体が協議会をつくり農村振興の課題に取り組む、EU共通農業政策のLEADER事業である。LEADER事業の協議会(ローカル・アクション・グループ)による事業評価において、どのような自己評価のやり方が有効か検証した。 文献調査では、ドイツ・2州にある65のLEADER地域の『2014-2020年期農村振興計画』を分析した。うち6地域を事例に、現地での聞き取り調査を重ねて理論構築した。聞き取り調査は、協議会のマネージャーと理事、地域の人々、研究所等の評価者、国・州の農業省の事業担当者に協力いただいた。EUの専門家にはオランダで聞き取り調査した。調査項目は、①評価の重点、②評価時期、③評価の指標と分析手法、④評価におけるEU、加盟国、地域の関係、⑤評価結果の農村振興政策へのフィードバック方法、⑥現在の評価体制・手法のメリット、⑦今後に残された課題とした。 研究成果としては、州と地域が公金支出の公平性・透明性を確保していることが確認された。それに加えて、州レベルでは事業効果を導く評価へ、地域レベルでは協議会の自己評価によるコレクティブ・ラーニング(集団的学習)の追求へと、評価の重点が明確化したことが考察された。そして、評価の重点にあわせた体制・手法が整備されたことが分かった。 協議会の自己評価では、Pollermann et al. (2009)の仮説である「協議会のマネージメント能力の向上」が全6地域で観察され、「地域の連携主体のモチベーション向上」は協議しながら自己評価した地域で観察された。LEADER事業のサイクルは、「イノベーションを起こすコレクティブ・ラーニング」(Dixon 1994)のサイクルと親和性があることが観察された。研究結果は、日本農業経済学会大会(2021年3月)で個別報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究チームは、ミーティングとメールによる意見交換を頻繁に行い、研究の問題意識と調査方法を共有し、綿密に連携して現地調査の準備を進めた。それにも関わらず、研究がやや遅れていると、研究代表者が評価した理由は、2019年度に計画したドイツとフランスの調査のうち、ドイツに関しては現地調査をふまえて十分な研究結果を得られたが、コロナ感染拡大のタイミングに現地調査が重なってしまったフランスに関しては、現地調査が延期となり、文献調査に限定して研究を実施せざるを得なかったためである。 本研究では、EU農政を専門とする4名の研究者が、ドイツ、オーストリア、フランス、フィンランドの調査・分析を行い、各国を横断的に比較分析する。研究代表者と研究分担者は、過去の研究と実務の経験が豊富にある。本研究の開始時に、本研究の背景である、EUの農村振興政策とLEADER事業の位置づけ、本事業の特徴、各国の地方分権の状況を熟知していた。それに加えて、現地の調査協力者とのコンタクトがとりやすかった。そのため、2019年度は本研究の初年度であるにも関わらず、ドイツでは詳細な現地調査を実施でき、十分な研究成果を得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、相手国の事情により延期となっているフランス、フィンランド、オーストリア、ドイツ(一部地域)の現地調査を、欧州への渡航が可能になった時点で速やかに再開したい。現地調査の調査票の作成など、準備を進めておくこととする。今後、EU加盟国の比較研究を実施することが課題である。日本の農山村再生に活かせる事業評価の実践的要件の考察を研究チーム全体で行っていく。 今後は、本研究の成果を社会に広く発信することにも努める。これまで日本では、EUのLEADER事業における協議会(ローカル・アクション・グループ)の仕組、協議会が取り組む助成事業について紹介されてきた。しかし、協議会による農村振興のマネージメントのノウハウはまだ十分に伝えられていない。 そこで、本研究の結果に基づいて、EUのLEADER事業のマネージメントに重要な評価に関して、その根底にある考え方を平易に説明し、EUのノウハウを伝える図書を作成する。日本の各地で農村振興に関わる人々が、より円滑に、より効果的に農村振興の取組を進められるよう、本研究の成果を社会に適切に発信したい。
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