2019 Fiscal Year Annual Research Report
Exploration of regulatory mechanism of jasmonic acid dependent isoprene biosynthesis in tropical trees
Project/Area Number |
19H03089
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
屋 宏典 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (10177165)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 星耕 沖縄国際大学, 経済学部, 准教授 (10623754)
稲福 征志 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 助教 (90457458)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | イソプレン / 熱帯樹木 / ホルモン / 制御 / シグナリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は乾燥ストレスがイソプレン放出と植物ホルモン濃度、イソプレン合成系遺伝子発現及び植物ホルモン合成遺伝発現に及ぼす影響を解析し、ストレス時のイソプレン合成制御に関わるホルモンネットワークの解明を試みた。熱帯樹木オオバイヌビワに短期(4日間)乾燥ストレスを負荷した後、5日以降再度灌水し、イソプレン放出変化と上記パラメーターの相関を解析した。乾燥ストレス負荷に伴い土壌水分含量は5日目まで低下し、灌水により、乾燥ストレスを負荷していない対照群のレベルまで回復した。イソプレン放出は4日目までは大きな影響は認められなかったが、5日目に顕著に増加し、6日目には対照群と同等のレベルに低下した。本年度はこの乾燥ストレス負荷に伴うイソプレン変動に際しての上記パラメーターの相関を多次元尺度法(MDS)により、2次元にプロットして相互関係の解析を行った。植物ホルモンのサイトカイニンのうちイソペンテニルアデノシン(iPR)はMDSプロット上イソプレン合成酵素遺伝子(IspS)の近傍に位置し、両者間には有意な負の相関が認められた。また同じサイトカイニンのトランスゼアチンヌクレオチド(tZR)もMEP代謝系中間代謝産物の近くにプロットされたことから、サイトカイニンがイソプレン放出と関連する可能性が示された。植物ホルモンシグナリング遺伝子のうちジャスモン酸(JA)の下流ではたらくERF1はイソプレン放出速度及びIspS酵素タンパク質濃度の近くに配置されることから、JAがイソプレン放出制御に関わることを支持するものと考えられた。一方において、その他のホルモンシグナリング関連の遺伝子はイソプレン放出及びMEP経路関連遺伝子や代謝産物とは離れた位置でまとまったクラスターを形成した。このことは多くのホルモンシグナリングに相互作用があるがイソプレン合成制御とは連動していないことを示唆していた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イソプレン放出並びに代謝産物の分析法に関してはこれまでの蓄積があるが、ホルモン分析に関しては未経験であっため、他大学との連携も含めて、分析系の確立に時間を要した。しかしながら、昨年度に低温ストレス負荷試験や年間を通じてのイソプレン放出のデータと葉のサンプリング等データ取得に向けた準備が整っており、昨年度の遅れを今年度は取り戻すことができるものと考えている
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究において、ホルモンシグナリングの遺伝子発現が似たような挙動を示した。これは、遺伝子発現解析に何らかの問題がある可能性が考えられる。今年度は再現性を確認しながら、分析精度の向上を図る。また、ホルモンに関しては前年度の成果をうけて、ジャスモン酸並びにサイトカイニンに焦点を絞って解析を進める。イソプレン放出に関しては昨年度に既に人口気象室並びに野外での測定と葉のサンプリングを終えているので、今年度は葉の関連成分分析と遺伝子発現解析に注力して、関与ホルモンの候補のさらなる絞り込みを行う。また、ジャスモン酸を散布してイソプレン放出変動とホルモン並びに関連パラメーターの相関解析を行う。これらの成果を統合することにより、イソプレン制御におけるホルモンシグナリングの概要を明らかにする。
|