2020 Fiscal Year Annual Research Report
低炭素社会構築に向けた低温適応性新規糖質分解酵素の高機能化とその利用
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19H03090
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
上田 光宏 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (50254438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉田 太郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学領域, グループリーダー(定常) (50391248)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 低温適応性糖質分解酵素 / 生デンプン分解酵素 / セルラーゼ / 低炭素社会構築 / バイオ燃料 / 連続糖化発酵法 / ミミズ / SDGs |
Outline of Annual Research Achievements |
低炭素社会構築に向けてミミズ由来の低温適応性新規糖質分解酵素の構造と機能に関する研究を行ってきた.ミミズ由来の糖質分解酵素は低温環境下でも十分な糖化能力を保持している.これまでにミミズ由来のマンナン分解酵素(Ef-Man)を用いて野生株(WT)より低温活性が向上するとともに,熱安定性を維持した変異酵素の取得に成功している.この研究では塩橋に着目することで目的とする酵素を取得するに至った.そこで,本年度はミミズ由来のセルラーゼ(エンドβ-1,4 グルカナーゼ, Ef-EG2)を用いて,塩橋を新たに導入することで熱安定性の向上した酵素を得ることを目的に研究を行った.立体構造情報を元に側鎖間の距離が4オングストローム以内の塩橋を変異導入箇所として選択した.これらの変異酵素の内,N372DとQ387Eにおいて活性が見られた.両変異酵素とも熱安定性に関してはWTの方が良い結果を示した.一方,予期していなかったことであるが,比活性(最適温度:40℃)はWTの2.5倍を示した.低温側の活性も2倍以上の活性が見られた.N372D, Q387Eともに比活性の向上が見られたが,熱安定性が良くなかったので,次にEf-EG2の表面電荷に着目し,変異酵素を作成することとした.Ef-EG2を立体構造の類似するNtEg1(好熱性酵素,最適作用温度67℃)と表面電荷を比較した.その結果,NtEg1では酸性アミノ酸が塩基性アミノ酸に置き換わっている箇所のあることを見出した.そこで,表面電荷を改変したEf-EG2 D43Rを作製した.Ef-EG2 D43Rは最適温度でWTの2.5倍の比活性を示した.低温側の比活性も2倍以上向上していた.さらに,D43Rの場合,熱に対してWTとほぼ同じ安定性を示した.当初の目的とは異なるが,熱安定性を保持させながら,比活性を最大2.5倍向上させることに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度同様,低炭素社会構築に向けてミミズ由来の低温適応性新規糖質分解酵素の高機能化とその利用に関する研究を行っている.これまでにマンナン分解酵素(Ef-Man),セルラーゼ(Ef-EG2)の塩橋や表面電荷に着目し,各種変異酵素を作製したところ,低温側の活性向上,比活性向上(2倍以上)や熱安定性を保持した変異酵素の取得に成功している.立体構造情報も取得しており,酵素の構造と機能に関する情報も取得するに至っている.
ミミズ由来の低温適応性生デンプン分解酵素であるEf-Amy IとEf-Amy IIのアミノ酸配列の僅かな違いが基質特異性や分解様式に差をもたらすと考え,構造面並びに機能面からそれぞれ検討してきた.その結果,Ef-Amy Iにのみに存在するLoop構造はオリゴ糖の分解活性や分解様式に影響を与えることを明らかにした.生デンプンを低温下で効率よく分解するためにもこれら2種類の酵素の構造機能相関を明らかにすることは重要と考えている.各種変異酵素も作製予定でおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,低炭素社会構築に向けてミミズ由来の低温適応性新規糖質分解酵素の高機能化とその利用に関する研究を行ってきた.今後の研究の推進方策は下記の通りである. これまでにマンナン分解酵素(Ef-Man)とセルラーゼ(Ef-EG2)の塩橋や表面電荷に着目し,各種変異酵素を作製してきた.その結果,低温側の活性向上,比活性向上(2倍以上)や熱安定性を保持した変異酵素をそれぞれ取得している.次年度は,生デンプン分解酵素(αーアミラーゼ: Ef-Amy I とAmy II)に着目し,低温活性を向上させるとともに,熱に対して安定な酵素を得ることを目的に各種変異酵素を作製する予定である.構造面についてもX線結晶構造解析法を用いて高次構造を明らかにしていく予定である.これまでEf-Amy IとEf-Amy IIの構造の僅かな違いが基質特異性や分解様式に影響を与えると考え,Ef-Amy Iにのみに存在するLoop構造に着目し,Loop構造の機能を明らかにしてきた.Ef-Amy IとEf-Amy IIの構造比較からLoop構造とは別の部分(2カ所)に構造の異なる領域のあることを見出している.次年度はこれまで得られた結果を基にさらに構造と機能相関に関する研究とその利用に向けての研究を行う予定である.
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