2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a new strategy aiming for the prevention of animal infections using antimicrobial proteins and peptides
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19H03101
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
米山 裕 東北大学, 農学研究科, 教授 (10220774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野地 智法 東北大学, 農学研究科, 准教授 (10708001)
伊藤 幸博 東北大学, 農学研究科, 准教授 (70280576)
榎本 賢 東北大学, 農学研究科, 准教授 (90546342)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 抗菌ペプチド / 抗菌タンパク質 / 細菌感染症 / 抗生物質 / 薬剤耐性菌 / 家畜感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
家畜生産現場で頻発するウシ乳房炎は罹患しやすく極めて治りにくい疾病のため世界的に家畜の最難治疾病の一つとされ、その経済的損失は甚大である。乳房炎の治療法として抗生物質投与が一般的に行われているが、起因菌の中でも黄色ブドウ球菌は抗生物質投与によって一旦治癒しても再発を繰り返し根治することが困難である。一方で、近代の集約的家畜生産システムは、治療以外にも飼料に添加する多量の抗生物質に依存しており、それが選択圧として作用し薬剤耐性菌出現の温床となりうることから公衆衛生上大きな問題となっている。本研究では抗生物質に替わる家畜感染症の新規防除戦略の開発を目指し2つの研究課題に取り組み以下の結果を得た。1)ランダムな7ペプチドのファージライブラリーを用いたファージディスプレー法を行い、ウシ乳房炎から分離された黄色ブドウ球菌に特異的に結合するペプチドのスクリーニング行い、選抜した43個の独立したファージのpIII遺伝子の塩基配列を解析した結果、8個のファージが同じヘプタペプチド配列をもっていた。2)このペプチドに注目し、クロラムフェニコールとの共役化合物を合成し、5番目のリジンのアミノ基側鎖にクロラムフェニコールが結合していることをNMR測定とMSスペクトル測定で検証した。3)この共役化合物の黄色ブドウ球菌標準株に対する最少発育阻止濃度(MIC)を評価したが、抗菌活性の増強は認められなかった。4)しかし、フリーの当該ペプチドに比べ共役化合物はある程度の増殖を抑制していたことから、結合による立体障壁の影響は少ないと考えられた。5)細胞質発現型、クロロプラスト移行型、細胞外分泌型のリゾスタフィン遺伝子を導入したイネの再分化固体の取得に成功した。6)導入したリゾスタフィンの発現をRT-PCR解析を行った結果、クロロプラスト移行型リゾスタフィンの発現が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では次の2つの課題を実施している。①ファージディスプレー法を用いて乳房炎由来黄色ブドウ球菌に対して特異的結合能をもつペプチドの探索を行い、抗生物質に代わるミサイル療法の確立に向けた基盤研究を行う。②黄色ブドウ球菌を特異的に殺菌する抗菌タンパク質リゾスタフィンを用いた新規乳房炎防除法を開発するためには抗菌タンパク質の極めて安価な生産法の確立が必須である。そこで、植物を宿主としたリゾスタフィンの極めて安価な生産法の確立を行う。課題①に関して、7個のランダムなペプチドライブラリーを用いたファージディスプレイ法を用い、黄色ブドウ球菌に特異的結合能を持つペプチドのスクリーニングを行い選抜したヘプタペプチドとクロラムフェニコールとの共役化合物の合成に成功したが、期待した抗菌活性の増強が認められなかった。ファージディスプレイ法の標準的なパニング操作で黄色ブドウ球菌に特異的結合能を有するファージの濃縮を行ったが、黄色ブドウ球菌の生菌を標的とした条件が目的とする特異的ファージの選抜に最適な条件ではないことが考えられた。課題②に関しては、3種類の組換え型リゾスタフィン遺伝子を導入したイネの再分化個体をそれぞれ複数取得することができたが、RNAレベルでの発現を検証することができた固体は、現時点ではクロロプラスト移行型リゾスタフィンを導入したイネであるが、このイネでのタンパク質レベルでのリゾスタフィンの発現が現時点では検証することができていない。他2種類の形質転換イネ(細胞質発現型、細胞外分泌型)のリゾスタフィンの発現について早急に検証する必要性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
課題①について、ランダムな7ペプチドからなるライブラリーよりもペプチドの取り得る構造の多様性が期待される12ペプチドからなるライブラリーを用いたファージディスプレー法を用いて黄色ブドウ球菌特異的なペプチドの探索を行う。このスクリーニングを行うにあたり、増殖効率を上げるために条件を複数設定してパニング操作を実施する。具体的には、1)洗浄操作時に添加する界面活性剤の濃度条件の検討を行う、2) 洗浄操作の洗浄回数の影響を評価検討する、3)標的に対する特異的結合能を評価するための最適条件の検討をする。これらの条件検討を行い黄色ブドウ球菌特異的ペプチドの選抜を行った後、抗生物質(クロラムフェニコール)に加え、抗菌ペプチドと連結した共役化合物の設計を行い化合物の合成を進める。課題②については、これまでの研究で評価に至っていない細胞質発現型および細胞外分泌型リゾスタフィンを導入したイネのRT-PCR解析とウェスタンブロット解析を実施し、取得したイネ形質転換体でのリゾスタフィンの発現を検証する。これまでの研究で用いた組換え型リゾスタフィン遺伝子の構築では、一般的に使われるユビキチンプロモーターを利用しているが、期待するほどのイネでの発現が認められないこともあり得る。植物で異種タンパク質を生産する場合、細胞内での発現に比べ細胞外へ分泌させた方が標的タンパク質の精製効率が良い。そこで、細胞外分泌型のリゾスタフィン生産系の構築を達成するために、イネの分泌タンパク質であるアミラーゼ遺伝子のプロモーターとイネアミラーゼのシグナル配列を利用した組換え型リゾスタフィン遺伝子を設計し、その遺伝子を導入したイネ形質転換体の構築も並行して進める。
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