2019 Fiscal Year Annual Research Report
Global profiling of pathogens in ticks
Project/Area Number |
19H03112
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松野 啓太 北海道大学, 獣医学研究院, 特任講師 (40753306)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大場 靖子 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 講師 (60507169)
梶原 将大 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 特任助教 (70711894)
山口 宏樹 北海道立衛生研究所, その他部局等, 研究職員 (50777836)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アルボウイルス / マダニ |
Outline of Annual Research Achievements |
複数の微生物を網羅的かつ同時に検出・培養する手法の開発を実施した。本研究では、非特異的な手法と 特異的な手法とを効果的に組み合わせ、マダニ中の微生物の網羅的解析を行った。採集したマダニは顕微鏡下で種同定した後、下記の3つの方法のいずれかに供した。 (1)核酸ベースの網羅的検出と、乳剤からの分離培養(従来法):この手法では、マダニを大きさに応じて1匹ずつあるいは2~10匹ずつプールして乳剤を作成し、抽出した核酸から各種微生物・病原体を検出可能なRT-PCR・PCRならびに18Sアンプリコン解析により、ウイルス・細菌・寄生虫を検出した。ウイルスが検出されたマダニ乳剤については培養細胞を用いて分離培養を試みた。(2)実験動物を用いた人工吸血による病原体検出と、動物組織からの分離培養(吸血法):実験動物にマダニを付着させ、実験室内でマダニに吸血させた。マウスとウサギを用いたものの、ウイルス感染と思われる症状を示した動物はいなかった。(3)Ex vivo共培養による網羅的検出(Ex vivo共培養法):解剖により取り出したマダニの臓器を先行研究(Grabowski et al. 2017 mBio)の方法に基づき培養した。また、微生物を保有したマダニの臓器を培養細胞とex vivo共培養し、ウイルス・リケッチア等の分離培養を実施した。以上の中で、(1)と(3)の方法により、マダニ中のウイルスを複数同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はマダニから様々な微生物を培養する技術開発を予定通り実施し、複数のウイルスおよびリケッチアを培養した。(2)の吸血法では実験動物体内における微生物増殖の有力な証拠は得られなかったが、マダニの人工吸血におけるマダニ種ごとの重要なデータを得ることができた。上記の理由により、本研究は順調に進展していると自己評価する。ただし、海外での採材を計画している本研究において、新型コロナウイルス感染症による渡航自粛の状況は計画に重大に影響しうる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は昨年度に引き続き、複数の微生物を網羅的かつ同時に検出・培養する手法の開発を行う。さらに、昨年度にマダニ咬傷後に発熱を呈した患者から検出されたオルソナイロウイルス (児玉ら、国立感染症研究所IASR 2020年1月号)が分布していると考えられる北海道において、このウイルス (Yezoウイルス)を対象とした調査を実施する。また、日本全国でマダニからオルソナイロウイルスの検出を試みる。本年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、海外でのマダニ採集が極めて困難になると予想されるため、研究協力者からマダニを送付してもらうなどの代替策を進めることで、採集地域が限定されることを防ぐ。さらに、実験室内で人為的にウイルスを接種したマダニを用いた実験モデルからのウイルス検出・分離培養方法検証を進め、状況が改善した際に野外調査を精力的に進められるよう準備を行う。 マダニから分離培養された各微生物については、遺伝情報解読と病原性解析の2つの性状比較解析を実施する。まず、マダニから検出された各微生物は、サンガーシークエンサーと次世代シークエンサーを併用して遺伝子配列を解読する。本年度は特に前述のYezoウイルスに注力し、全長遺伝子配列の解読と、ウイルス分離培養 (あるいは遺伝子組換え技術を用いた代替実験法樹立) に注力する。さらに、これまでに収集あるいは分離培養したウイルスについて、実験動物を用いて病原性の検討を実施する。ただし、病原性試験については、P2あるいはP3での実験となるため、マスクや消毒薬等の入手困難な状況を加味し、不要不急と判断される場合は遺伝子組換え実験をさらに多くのウイルスについて行うことで、病原性推定に十分なデータが得られるよう務める。
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Research Products
(2 results)