2020 Fiscal Year Annual Research Report
Staging-based regenerative therapy for spinal cord injury in dogs
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19H03123
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西村 亮平 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (80172708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 英高 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (00622804)
藤田 直己 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (10554488)
伊藤 大介 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (40508694)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 犬 / 脊髄損傷 / 間葉系幹細胞 / 骨髄脂肪細胞周囲細胞(BM-PAC) |
Outline of Annual Research Achievements |
急性期脊髄損傷を対象とした実験では、他家移植による治療効果を検討した。免疫不全マウス脊髄損傷モデルに犬BM-PACを投与した場合と比較し、正常な免疫を持つマウスに犬BM-PACを移植した場合は、治療効果が低減した。また、ビーグル皮下に他家BM-PACを移植したところ、T細胞やマクロファージの浸潤がみられた一方で、自己細胞の場合は、それらの細胞の浸潤はみられなかった。これらのことから、間葉系幹細胞であるBM-PACはホストからの免疫を受けており、他家移植は自家移植と比較し、移植効果を得ることが難しいと考えられた。他家移植は急性期症例に対する迅速な治療法として期待できるが、免疫抑制剤などとの併用が必要であることが示唆された。 一方、慢性期脊髄損傷を対象とする実験では、これまで、BM-PACから神経細胞様の形態と遺伝子発現特性を有する細胞の誘導に成功しており、本年度はさらに、誘導後の細胞が神経組織を構築する能力を有するかどうかを検証するため、ニューロスフェアへの誘導を行い、3次元培養により構築された組織の神経組織としての性状を評価した。その結果、平面培養と比較して、3次元培養を行なった場合は、未分化マーカーであるSOX2やOCT4の発現上昇がみられ、近年、ヒト神経幹細胞マーカーとして提唱されているMusashi1の発現上昇も確認され、3次元培養ではより未分化な神経幹細胞様細胞がニューロスフェア内に誘導されると考えられた。ニューロスフェアは培養を継続すると成熟神経細胞マーカーの発現もみられるようになり、BM-PACから神経幹細胞様細胞を含むニューロスフェアを形成可能と考えられた。また、一部のスフェアにはTyrosine HydroxylaseやChATの発現が上昇しており、誘導されたニューロスフェアから、特定の機能を有するニューロンへ分化誘導が可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響もあり、臨床試験の実施が困難であった。臨床試験は1例実施できており、現在、治療効果については経過観察中である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、慢性期脊髄損傷に対するBM-PAC由来ニューロスフェアを用いた移植研究を主に遂行する予定である。これまで誘導したニューロスフェアから、昨日特異的な神経細胞、すなわち、ドパミン作動性神経や、セロトニン作動神経、アセチルコリン作動性神経などの細胞への誘導が可能かを検討する。特に、運動ニューロンへの誘導は運動ニューロン前駆細胞マーカーであるHB9の発現上昇を確認していることから、誘導できる可能性が期待できるが、犬では脊髄損傷以外にも運動ニューロン変性疾患も重要な再生医療の治療標的であることから、将来的には、脊髄損傷以外の神経変性疾患への技術応用を視野に入れた研究を行う予定である。 一方で、急性期あるいは亜急性期の脊髄損傷に対しては、経静脈移植の臨床試験を引き続き行なっていく。コロナ禍で受け入れが難しい面があるが、現在進行中の臨床試験については、良い結果が得られており、症例数を重ねて有効性と安全性の検証を継続して行う。
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