2020 Fiscal Year Annual Research Report
Osteochondral regeneration by autologous transplantation of abundant stem cells cultured high-densely
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19H03129
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
三角 一浩 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 教授 (10291551)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藏元 智英 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 助教 (80813154)
畠添 孝 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 准教授 (90776874)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 幹細胞 / 軟骨 / 骨 / 関節症 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
① 関節内骨折の馬10例から滑膜組織を採取し得た有核細胞を、三次元高密度大量培養システム(不織布全自動細胞培養装置)にて培養した。得られた滑膜組織は396±245mgであり、トリプシン処理後に得られた有核細胞数は6.45±1.92×10^6個であった。それら細胞を不織布1枚あたり1.0×10^4個で播種し、培地中のグルコース消費量をもとに細胞数を推定しながら、サブコンフルエントで細胞培養を終了し細胞数をカウントした。有核細胞播種後11.6±0.8日間の培養で、1.12±0.28×10^8個のP0細胞(継代なしの細胞)を得た。 ② ①で得たP0細胞の表面マーカー解析では、CD90・CD44・CD105に対して陽性、CD31・CD45に陰性を示した。軟骨細胞、骨芽細胞、脂肪細胞への分化能は、それぞれAlcian blue、Alizarin red、Oil redに染色される特異基質の産生から確認された。軟骨基質産生能に優れた特性が確認された。①・②から、馬の症例滑膜由来の有核細胞の中から1億個以上のP0-SMMSC(継代なしのSMMSC)を分離培養できることの再現性が確認された。 ③ ①で得たP0-SMMSC(8例)を使って、30枚の不織布に1枚あたりの播種密度を変えて拡大培養した。培地のグルコース消費量に基づき、サブコンフルエントでP1細胞を回収した。播種密度3.0×10^4/枚では、13.6±1.1日で9.0×10^5個のP0-SMMSCが1.68±0.28×10^7個(18倍)のP1-SMMSC(1継代のSMMSC)に、播種密度5.0×10^4/枚では、13.5±1.0日で1.5×10^6個のP0-SMMSCが1.94±0.44×10^7個(13倍)のP1-SMMSCに拡大された。本研究の主目的の1つである滑膜組織から10億個以上のP1-SMMSCを得る方法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
馬の滑膜由来幹細胞(SMMSC)を最少継代(1継代)で大量(1×10^9個)に培養する技術を確立することが、本研究の前半部分の大きな目標である。これまでの2年間で、三次元高密度大量培養システム(不織布全自動細胞培養装置)を動物細胞仕様に設定し、馬の症例滑膜組織から得た有核細胞からSMMSCを分離すると同時に増殖させて、10~12日間の培養期間で1億個以上のP0-SMMSC(継代なしのSMMSC)を得る方法を確立することができた。さらにこのP0-SMMSCを、不織布培養を使って13~18倍に拡大培養する条件を見出し、計算上は、滑膜組織から10億個以上のP1-SMMSCを得るという目標を達成できたことになる。不織布によるウマSMMSCの三次元培養に関する報告は過去になく、全くゼロからの出発であったが、研究開始後2年間で当初の目標に達しており、研究は概ね順調に進捗していると考えている。 次の目標は、SMMSCを馬の関節に注射して、安全性と効果を判定する試験を実施することである。この試験に先立って、これまで不織布培養に用いた基礎培地に添加していたウシ胎児血清が、注射後に異種タンパクとして免疫応答を惹起させる可能性や、病原体の混入のリスクを有していることが課題とされたため、馬の自己血清添加培地または無血清培地に置き換えて不織布によるSMMSC培養が再現できるか検証している。スモールスケールによる実験では、自己血清10~20%添加培地が、ウシ胎児血清20%添加の培養条件と同等以上であるという結果を得ている。 最終年度となる研究3年目には、モデル動物による効果判定までを当初計画している。研究馬では上記の自己血清で培養した細胞の自家移植の安全性と効果を観察する計画となっている。その後、臨床治験に承諾を得た個体に対して、疾病関節へのSMMSCの自家移植を行い安全性と効果を観察する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
滑膜由来有核細胞から、自己血清添加培地を用いて、三次元高密度大量培養システム(不織布全自動細胞培養装置)による培養(10~12日間)で、1億個以上のP0-SMMSC(継代なしのSMMSC)を得る可能性がでてきた。無血清培地についても検討の余地はあるが、SMMSCによる治療を馬診療に応用することを想定すると、移植細胞を準備するまでのコスト高にならないように、自己血清による培養を選択して研究を推進することとしている。今後は、自己血清添加培地によるラージスケール条件下で、1億個のP0-SMMSCの分離培養を実証し、自家移植試験へと進めて行く。 次のステップでは、研究馬を用いて、滑膜組織採取手術後2週間が経過した時点(手術による関節包や皮膚の切開が完全癒合した時点)で、1×10^8個のP0-SMMSCを関節内注射により自家移植して、その安全性と効果について評価を行う。細胞注射後の局所反応、あるいは跛行等の臨床症状の発現・経過を観察し、最終的には病理学的評価により安全性を判定する。この実験では関節疾患のない正常滑膜組織からP0-SMMSCを回収するという点で、これまでの実験とは異なっている。したがって、研究馬とは別に承諾を得た疾患馬(手根関節に変形性関節症のある馬を対象)について、関節鏡視下にて骨軟骨病変の手術を行った関節に対して、術後2週間後に1×10^8個のP0-SMMSCを自家移植する試験を計画している。疾患馬においても同様に、注射後の合併症の有無を観察し、術後の経過について臨床症状とX線検査から評価する。当初計画していた馬における関節内の骨軟骨欠損モデル動物における移植後のCT、MRI等による定量的評価は代替実験を計画することになるかもしれないが、上記の2つの実験で得られる自家移植後の内視鏡所見(肉眼所見)と病理組織検査によって、臨床的により有用な結果が得られると考えている。
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Research Products
(1 results)