2021 Fiscal Year Annual Research Report
Basic study on epithelial-mesenchymal transition leading to intractable fibrosis based on the somatic stem cells
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19H03130
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
山手 丈至 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 客員研究員 (50150115)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑村 充 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (20244668)
井澤 武史 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (20580369)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 体性幹細胞 / 難治性線維化 / 上皮間葉転換 / 筋線維芽細胞 / 臓器横断的解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋線維芽細胞の起源と、それを導くマクロファージの特徴について、以下の実験を行った。1.ジブチルすずジクロリド誘発膵線維化;膵外分泌腺の萎縮・水腫、マクロファージの反応と筋線維芽細胞の出現による線維化が生じた。CD68発現傷害性M1型マクロファージがまず出現し、その後CD163発現修復性M2型マクロファージが増加した。筋線維芽細胞は、vimentin、desmin、GFAP及びα-SMAを発現し、Thy-1発現細胞も出現した。膵線維化での筋線維芽細胞は、Thy-1発現の未分化間葉系細胞やGFAP発現の既存の膵星細胞から形成されることが示唆された。2.イソプロテレノール誘発心筋線維化;心筋壊死に続き水腫とマクロファージの浸潤があり、その後肉芽組織が形成され、器質化した。CD68発現M1型マクロファージは初期に、CD163発現M2型マクロファージは肉芽組織の形成時期に一致し増加した。筋線維芽細胞はα-SMA、vimentinを発現し、Thy-1やA3発現の未分化間葉系細胞が観察された。心筋線維化での筋線維芽細胞も未分化間葉系細胞に由来すると考えられた。3.デキストラン硫酸ナトリウム誘発結腸線維化;粘膜に潰瘍と線維化が生じた。筋線維芽細胞は、vimentinとα-SMAを発現し、Thy-1やA3発現細胞が混在した。結腸線維化でも未分化間葉系細胞から筋線維芽細胞が形成されることが示唆された。また覆蓋粘膜のrescue細胞や陰窩stem cell niche構成の上皮系細胞がA3を発現していた。4.皮膚パンチ創傷後の線維化;損傷部位の肉芽組織の新生血管周囲と創床周囲の成長期の毛根周囲結合織鞘間葉系細胞にA3発現があった。これら細胞が筋線維芽細胞の起源と考えられた。さらに毛包のバルジから漏斗部、そして創床部の覆蓋上皮にA3発現があり、A3発現の上皮細胞が表皮再生に係ることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジブチルすずジクロリド誘発膵線維化、イソプロテレノール誘発心筋線維化、デキストラン硫酸ナトリウム誘発結腸線維化と皮膚パンチ創傷後の線維化を用いて、筋線維芽細胞の特徴と起源を解析した。いずれにおいても、未分化な間葉系細胞を認識するThy-1あるいはA3を発現する細胞が観察されたことから、筋線維芽細胞は体性幹細胞に起源がある可能性が示唆された。また、筋線維芽細胞の出現には主にM2マクロファージから産生される因子が係る可能性も分かった。興味ある所見は、結腸の粘膜再生と皮膚損傷部位の表皮再生においてA3発現の未分化な上皮系細胞が関与することが示された。このように予定していた研究は順調に進んでいるが、「体性幹細胞-未分化間葉系細胞-筋線維芽細胞-マクロファージ」を軸とした線維化の包括的なメカニズムを解明する必要がある。さらに、A3抗体認識抗原の役割を「体制幹細胞-未分化上皮系細胞-上皮再生」の観点で追究する必要もある。これらの点は最終年度(2022年度)の研究を含めて総合的に考察する必要があることから「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
筋線維芽細胞は線維化の形成において重要である。筋線維芽細胞の特性を、その起源の一つである未分化間葉系細胞を認識するA3抗体を用いて臓器横断的に追究するとともに、得られたデータを上皮-間葉転換(EMT)の観点から考察する。加えて、浸潤マクロファージから産生される線維原性因子(TGF-βなど)の影響を受け筋線維芽細胞が形成されることから、特に肝障害に出現するマクロファージの特性とその誘導のトリガーとなるダメージ関連分子パターン(DAMPs)、さらにはDAMPsを処理するオートファジーに焦点を当て解析する。この一連の成果に基づいて、線維化の病理発生機序を包括的に解明する。また、進行する線維化は臓器の機能不全(難治性線維化)を惹起することから、線維化を軽減する方策を追究する。以下の項目についてラットを用いて検討する。 1.肝障害モデルの解析;筋線維芽細胞の形成に係るマクロファージの誘導機序について「DAMPs(HMGB1など)-オートファジー-マクロファージ」の相互の関連を基軸として解析する。特に、腸内細菌叢から放出されるリポポリサッカライド(LPS)はマクロファージを介した自然免疫に係ることから、LPSの肝マクロファージ(クッパー細胞など)に与える影響を追究する。 2.腎線維化モデルの解析;マクロファージなどの炎症を抑制するデキサメサゾンと、腎への機能負荷を軽減するアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤をシスプラチン誘発腎線維化モデルに適応し、出現するマクロファージと筋線維芽細胞の特性を中心に、かつEMTに注目して解析する。 3.総括;最終年度となることから、A3抗体が標識する体性幹細胞の生物学的特性を明らかにするとともに、線維化病変に出現する筋線維芽細胞の性状とその起源、そしてEMTとの係わりを、肝、腎、肺、心筋、膵、結腸、皮膚の線維化病変を用いて臓器横断的に比較解析する。
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