2020 Fiscal Year Annual Research Report
志賀毒素2e産生性大腸菌のゲノムおよび毒素産生能の解析と高リスク系統同定法の開発
Project/Area Number |
19H03133
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
楠本 正博 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, グループ長 (40548210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 哲也 九州大学, 医学研究院, 教授 (10173014)
有満 秀幸 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (40367701)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 志賀毒素産生性大腸菌 / Stx2e / 全ゲノム解析 / 毒素産生試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
豚の浮腫病は養豚に深刻な被害を及ぼす疾病であり、志賀毒素2e型を産生する大腸菌により惹起される。ヒトに重篤な腸管感染症を引き起こす大腸菌O157などが産生する志賀毒素(主に1型、2a型、2c型)とは異なり、志賀毒素2e型は毒素産生試験法が確立されておらず、その産生機構も未解明であり、また志賀毒素2e産生性大腸菌の系統分布や高リスク系統の有無なども現状では不明のままである。そこで、まずは全ゲノム系統解析により志賀毒素2e産生性大腸菌の系統分布を解明するため、1991年から2018年にかけて全国の下痢および浮腫病の豚群から分離された志賀毒素2e産生性大腸菌約900株について、各都道府県で半年間に分離された株の中からO群血清型あたり1株ずつの基準でゲノム解析株を選抜した。令和2年度(2020年度)は次世代シーケンサー(Illumina HiSeq)を用いた全ゲノム解析を継続し、Platanus_Bによるアセンブルを行い、300bp以上のコンティグ配列についてcoverage(コンティグ数あたりのリード数)25以上、checkMを用いたcontamination評価1.5未満を指標にシーケンス結果を評価、選抜し、昨年度と合わせて志賀毒素2e産生性大腸菌485株のドラフトゲノム配列を得た。「先進ゲノム支援」で解析した志賀毒素非産生性大腸菌288株のデータについても同様に評価し、286株のドラフトゲノム配列を選抜した。 また、昨年度に確立したELISAによる毒素産生試験法を用いて、志賀毒素2e産生性大腸菌108株および志賀毒素非産生性大腸菌4株(陰性コントロール)について毒素産生量を測定したところ、志賀毒素2e産生量が数十倍から100倍程度高い系統(志賀毒素2e高産生系統)を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、国内で豚から分離された志賀毒素2e産生性大腸菌の大規模ゲノム解析および毒素産生能の解析を行い、高リスク系統を探索する。また、浮腫病の発症に直接関連するStx2eの産生機構を明らかにする。志賀毒素2e産生性大腸菌にはどのような遺伝学的系統および毒素産生性の菌群が存在し、それらが豚群においてどのように分布するかを総合的に解明することで、高リスク系統の浸潤阻止や浮腫病の制御に資するツールを開発することを目的とする。令和2年度(2020年度)は当初計画の通り進捗し、国内の豚由来志賀毒素2e産生性大腸菌(485株)および志賀毒素非産生性大腸菌(先進ゲノム支援による解析286株)について高品質なドラフトゲノム配列を取得し、選抜した112株の毒素産生試験により志賀毒素2e高産生系統を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、令和3年度(2021年度)は豚由来志賀毒素2e産生性大腸菌についてRoaryおよびScoaryを用いたゲノムワイド関連解析を行い、志賀毒素2e高産生系統(高リスク系統)に特有の遺伝マーカーを同定する。次に、高リスク系統を家畜衛生の現場で迅速に摘発する手法として、PCRを用いて上記遺伝マーカーを検出する技術を開発する。
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