2020 Fiscal Year Annual Research Report
幹細胞老化に関わるH3K27エピジェネティック制御機構の解明
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19H03139
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩森 巨樹 九州大学, 農学研究院, 准教授 (70647362)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩森 督子 九州大学, 農学研究院, 特別研究員(RPD) (10711509)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 精子幹細胞 / 老化 / エピジェネティクス / JMJD3 / UTX / エネルギー代謝 / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
精子形成は個体のほぼ一生にわたって継続されるが、加齢に伴って、その繁殖能力は低下する。その原因の一つには精子幹細胞の老化が挙げられるが、幹細胞老化のメカニズムは明らかになっていない。我々は雄生殖細胞特異的にヒストンH3リジン27(H3K27)脱メチル化酵素JMJD3を欠損させると、精子幹細胞数が増加し、長期に渡り良好な繁殖能力を示す抗老化現象を見出した。そこで本研究では複数のマウスモデルを用いて、H3K27メチル化制御を中心とした、精子幹細胞老化メカニズムを分子的に理解することを目的とする。また、JMJD3欠損精子幹細胞ではもう一つのH3K27脱メチル化酵素UTXが異所的に発現するため、JMJD3欠損とUTX発現のどちらがより幹細胞老化に密接に関わるのか注目して解析する。今回解析するマウスモデルは1野生型マウス、2JMJD3欠損マウス、3JMJD3/UTX二重欠損マウス、4UTX発現誘導マウスの4種類であったが、UTX発現誘導マウスについては誘導される発現量が低いため、使用することを断念した。JMJD3/UTX二重欠損マウスを解析することでUTX発現が誘導されない精子幹細胞の老化について解析ができるため、大きな問題とはならないと考えられる。 これまでに野生型およびJMJD3欠損マウス精子幹細胞におけるRNA-seqおよびChIP-seqを行ったが、より純度の高い未分化精原細胞群を回収できるようになったため、野生型、JMJD3欠損マウスのほか、JMJD3/UTX二重欠損マウスからも試料を採取し、RNA-seq・ChIP-seqによる遺伝子発現プロファイルおよびエピゲノムプロファイルを得る。下流候補経路として注目しているエネルギー代謝経路およびオートファジー機構についての結果も得られつつあるが、より純度の高い細胞群を用いた解析を行い、H3K27メチル化制御との関連性、精子幹細胞老化との関連性を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では若齢および老齢精子幹細胞における発現遺伝子プロファイルおよびエピゲノムプロファイルを比較し、老化に関連するメカニズムを解析することを目的としている。実験試料の回収に時間がかかることは当初から想定されていた通りであり、新型コロナウイルス感染拡大による研究中断期間を考慮すると、希望通りの進展とはならなかったが、概ね順調に進展していると考えている。。今年度はさらに純度の高い未分化精原細胞集団を回収する方法を確立し、RNA-seq、ChIP-seqのデータ精度が上がることが期待される。これまでに得られている遺伝子発現プロファイルおよびエピゲノムプロファイルのデータとあわせて解析することでより高精度なH3K27メチル化制御の一端を明らかにできると期待される。一方で、UTX発現誘導マウスについては使用を断念したが、他のマウスを用いて補完できるため、問題ない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度中早いうちにより高精度な未分化精原細胞集団を用いたRNA-seq、ChIP-seqを実施し、データの精度、充実度を高めるとともに、解析を加速させる。データ解析を遂行することと並行して、qRT-PCRや免疫染色による検証を進め、老化に関わるメチル化H3K27経路を明らかにする。
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Research Products
(4 results)