2020 Fiscal Year Annual Research Report
DNAメチル化を介したゲノム安定性制御の分子メカニズム
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19H03153
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西山 敦哉 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (50378840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有田 恭平 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 准教授 (40549648)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 岡崎フラグメント / DNA複製 / ヒストン / PARP1 / HPF1 / LIG1 / LIG3 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまでにDNAメチル化制御因子であるUHRF1がDNAリガーゼLIG1のクロマチン結合を制御していることを明らかにしてきた。しかし、LIG1を抑制した場合にも、岡崎フラグメント連結を促進するバックアップシステムが機能していることが分かった。そこで、当該年度においては、岡崎フラグメント連結のバックアップシステムとして働くLIG3-XRCC1複合体の作用機序の解明に取り組んだ。特に、LIG1除去に伴い、ヒストンH3ADPリボシル化が亢進する点に着目し、その制御因子であるPARP1、及びその制御因子であるHistone Parylation factor 1 (HPF1)について解析を行なった。PARP1およびHPF1を免疫除去した抽出液では、LIG1除去に伴うヒストンH3ADPリボシル化が抑制されるとともに、LIG3-XRCC1複合体による岡崎フラグメント連結の効率が大きく低下することが分かった。また、興味深いことに、この時XRCC1のPoly-ADP-ribosylation (PAR)結合活性は必ずしも必要でなかった。以上の結果は、LIG1除去によって生じた未連結の岡崎フラグメントがPARP1-HPF1によるヒストンH3ADPリボシル化を誘導することで、バックアップ経路であるLIG3-XRCC1の活性化を促進していることを示唆しており、従来DNA損傷応答で重要な役割を果たすと考えられてきたPARP1依存的なPARシグナルとは異なる分子機構によって岡崎フラグメント連結が保証されていると考えられる。今後、上記のバックアップ経路も含めて、UHRF1による岡崎フラグメント制御についてさらに解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究により、岡崎フラグメント連結を担うDNAリガーゼを制御する新規のADPリボシル化シグナル経路が明らかになった。これは、DNAメチル化による岡崎フラグメント連結制御の分子機構を解明するための大きな足場となると考えられる。具体的には、これまでは岡崎フラグメント連結効率を評価する上で、複製後のDNA鎖におけるニックDNAの形成の検出が必要であったが、本研究で明らかになったヒストンH3ADPリボシル化を岡崎フラグメント連結不全の新たな指標として用いることが可能となった。また、DNAメチル化経路とともに機能すると考えられるPCNAを介したLIG1制御機構の役割について解析するためのPCNA結合部位を欠いたLIG1変異体の調製も完了している。本研究の主目的であるDNAメチル化を介した岡崎フラグメント連結制御の解析の準備は整ったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まずツメガエル卵抽出液を用いて、UHRF1依存的なLIG1制御機構が岡崎フラグメント連結にどのような役割を果たすのかを明らかにするために、ニックDNAの形成やヒストンH3ADPリボシル化を指標として解析をすすめる。その際に、DNAメチル化を介した経路がPCNA依存的な制御機構との相互依存的、あるいは相補的に機能することを考慮する必要がある。また、これと並行して哺乳細胞で同様の経路が機能しているかどうか検討するために、UHRF1のノックダウン細胞を用いて、ゲノム安定性や岡崎フラグメント連結効率についても解析を行う。
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