2019 Fiscal Year Annual Research Report
神経RNA顆粒液相-固相平衡の認知機能・疾患への関与
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19H03161
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Research Institution | Center for Novel Science Initatives, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
椎名 伸之 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 准教授 (30332175)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | RNA顆粒 / 液-液相分離 / ダイナミクス / 神経変性疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
RNA顆粒は液-液相分離によって形成され、内部に固相のサブドメインを有する高次複合体である。すでに我々は、RNA顆粒形成タンパク質をGFPやmRFP1蛍光タンパク質融合型としてA6細胞に発現し、そのダイナミクスを光褪色後蛍光回復法(FRAP)や細胞膜透過法(細胞膜をdigitonin処理後、RNA顆粒の形態変化を観察)によってイメージング解析する方法を開発している(Shiina, J. Biol. Chem., 2019)。本研究ではその方法をマウス大脳皮質由来の神経初代培養細胞に適用し、RNA顆粒形成因子で学習・記憶に必須のRNG105、及び神経変性疾患の原因遺伝子産物であるTDP-43とFUSのダイナミクスを解析した。TDP-43及びFUSは通常核内に存在するが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や認知症(FTLD)などの神経変性疾患では細胞質に移行し、RNA顆粒に集積・凝集化して神経変性を引き起こすことが明らかにされつつある。TDP-43及びFUSを神経細胞に過剰発現したところ、細胞体及び樹状突起の細胞質にRNA顆粒を形成し、以下のようなRNG105のダイナミクス変換を引き起こした。1)細胞膜透過法によるRNG105のRNA顆粒からの離散が顕著に促進された。2)FRAP法によるRNG105の蛍光リカバリー(可動性画分)が増大した。さらに、3)RNA顆粒に局在化していたRNG105が細胞質へ拡散した。以上の結果は、TDP-43及びFUSがRNA顆粒におけるRNG105の流動性を増大させ、その結果RNG105の安定的なRNA顆粒への局在化が失われ、顆粒外へ追い出されることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、RNA顆粒形成タンパク質のダイナミクスを神経培養細胞で解析した。その結果、TDP-43及びFUSがRNG105のRNA顆粒における流動性を上昇させ、RNA顆粒外へ追い出すという予想外の結果を得た。TDP-43及びFUSは固い凝集体を形成して神経変性疾患を引き起こすことから、RNA顆粒の流動性を低下させると一般的に考えられてきたが、結果はそれとは逆であった。この新たな発見は、神経変性疾患におけるRNA顆粒の機能の変化、ひいては神経変性疾患発症メカニズムの理解へ向けた足掛かりになると期待される。以上の点から、本研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
TDP-43及びFUSは全てのRNA顆粒形成タンパク質の流動性を上昇させるのか、あるいはRNG105のような特定のタンパク質をターゲットにして流動性を上昇させるのか、という新たな問いが生まれた。そこで、RNG105以外のRNA顆粒形成タンパク質G3BP, FMRP, PUM1等についても同様の解析を行う。また、培養細胞レベルの解析からin vivoでの解析への展開を図る。そのためにRNA顆粒形成タンパク質にGFPを融合させたノックインマウスを作成し、TDP-43やFUSの神経変性疾患モデルマウスとの交配を進める。
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[Journal Article] Seasonal changes in NRF2 antioxidant pathway regulates winter depression-like behavior.2020
Author(s)
T Nakayama, K Okimura, J Shen, YJ Guh, TK Tamai, A Shimada, S Minou, Y Okushi, T Shimmura, Y Furukawa, N Kadofusa, A Sato, T Nishimura, M Tanaka, K Nakayama, N Shiina, N Yamamoto, AS Loudon, T Nishiwaki-Ohkawa, A Shinomiya, T Nabeshima, Y Nakane, and T Yoshimura
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Journal Title
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
Volume: Apr 10
Pages: pii: 202000278
DOI
Peer Reviewed
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