2020 Fiscal Year Annual Research Report
神経RNA顆粒液相-固相平衡の認知機能・疾患への関与
Project/Area Number |
19H03161
|
Research Institution | Center for Novel Science Initatives, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
椎名 伸之 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 准教授 (30332175)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | RNA顆粒 / 液-液相分離 / ダイナミクス / 神経変性疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
学習・記憶に必須の役割を担う神経RNA顆粒は、様々なRNA結合タンパク質の液-液相分離によって形成される。神経変性疾患の原因遺伝子産物であるTDP-43及びFUSは、RNA顆粒に集積・凝集化することによって疾患を引き起こすと考えられている。我々はこれまで、TDP-43及びFUSのRNA顆粒への集積により、RNA顆粒形成因子RNG105の顆粒における流動性が上昇し、顆粒から細胞質へ離散することを見出した。本年度はTDP-43及びFUSの過剰発現によってもたらされるこのような変化が、RNG105特異的か否かについて解析を行った。マウス大脳由来神経培養細胞にRNA顆粒形成因子であるFMRP, PUM2, Staufen1, Staufen2をGFP融合型として発現し、さらにTDP-43, FUSを発現した際の影響を、蛍光イメージング及びFRAPにより解析した。その結果、FMRPの流動性は上昇したものの、PUM2, Staufen1, Staufen2の流動性に変化はなかった。また、いずれの因子も顆粒から細胞質へ離散しなかった。以上の結果は、TDP-43及びFUSによるダイナミクス変化は、特定のRNA顆粒形成因子で起こるものであり、特に顆粒からの離散はRNG105のような特定の因子に限定されることが明らかになった。 また、TDP-43及びFUSによるRNA顆粒形成因子のダイナミクス変化をin vivoで明らかにする目的で、RNG105及びG3BP1にGFPを融合したノックインマウスの作成を進めた。本年度はそのうち、G3BP1-GFPマウスの作成が完了した。このマウスの大脳由来神経培養細胞を蛍光イメージングした結果、ストレス誘導性のRNA顆粒(ストレス顆粒)にG3BP1-GFPが集積することが確認できた。RNG105-GFPマウスに関しては引き続き作成を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、TDP-43及びFUSのRNA顆粒への集積・凝集化による、RNG105以外のRNA顆粒形成因子のダイナミクスへの影響を解析した。その結果、影響はRNA顆粒全体に及んでいるわけではなく、特定の因子RNG105に顕著であることがわかった。この知見は、TDP-43及びFUSが原因となる神経変性疾患において、RNG105のRNA顆粒局在異常を介して認知機能の低下を引き起こすという新たな仮説を導き出した。また、当初の計画通り、RNG105-GFP及びG3BP1-GFPノックインマウスの作成を進め、G3BP1-GFPノックインマウスの作成を完了した。このマウスを用いてRNA顆粒及びストレス顆粒のin vivoイメージングが可能となり、当該研究分野において培養細胞レベルの研究を個体レベルの研究に展開する有用なツールを得ることができた。以上の点から、本研究は順調に進展していると判断された。
|
Strategy for Future Research Activity |
TDP-43及びFUSのRNA顆粒への集積・凝集化により、RNG105が特異的にRNA顆粒から細胞質へ離散するメカニズムを解析する。仮説として、TDP-43及びFUSとRNG105との間で、RNA顆粒への相互作用が拮抗する可能性が考えられる。タンパク質のどのドメインがそのような拮抗を生み出すのかを明らかにすることによって、RNG105離散メカニズムの解明を目指す。また、RNG105-GFPノックインマウスの作成を完成する。このマウスとTDP-43及びFUSの神経変性疾患モデルマウスを掛け合わせることにより、in vivoでもTDP-43及びFUSによるRNG105のダイナミクス変換及びRNA顆粒局在の変換が起こるか否かについて解析を行う。
|
-
-
[Journal Article] Seasonal changes in NRF2 antioxidant pathway regulates winter depression-like behavior2020
Author(s)
T Nakayama, K Okimura, J Shen, YJ Guh, TK Tamai, A Shimada, S Minou, Y Okushi, T Shimmura, Y Furukawa, N Kadofusa, A Sato, T Nishimura, M Tanaka, K Nakayama, N Shiina, N Yamamoto, AS Loudon, T Nishiwaki-Ohkawa, A Shinomiya, T Nabeshima, Y Nakane, and T Yoshimura
-
Journal Title
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
Volume: 117
Pages: 9594~9603
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
-
-
-