2019 Fiscal Year Annual Research Report
Architecture of photosensing organelle with PAC of 3D periodic structure
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19H03188
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岩崎 憲治 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 教授 (20342751)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光センサー / クライオ電子顕微鏡 / フラビン / ミドリムシ / PAC |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ミドリムシの光センサーオルガネラPFBを構成する分子PACの白色光下での原子構造解明を目標とし、実験を進めた.これまでに得られた(PACα)2(PACβ)2の4量体は3.4 オングストローム分解能であり,多くの部分で原子モデルの構築を可能にするだけの構造を示していた.しかhし,四量体の中央領域には,低分解能の構造が存在し,二次構造の予測も困難な程度であった.本年度は,その分解能改善に取り組んだ.非常に小さい上に、粒子の方位によっては、2次元粒子画像上で周辺領域の構造と重なってしまうため、周辺領域の構造情報を電顕画像から減算した後に、中心領域の構造に絞って三次元クラス分類を行う「局所三次元クラス分類 (Focused classification)」という方法を適用した.三次元再構成で得られた密度図から,中心領域のみを覆うマスクを作製した.さらに、その中心領域以外の周辺領域のマスクも作製した. 三次元再構成に用いた449,596粒子画像に対して、信号減算用マスクを用いて周辺領域の信号を減算した後、クラス分類用マスクを用いてC 2対称性を適用した三次元クラス分類を行った. 形状が類似していて粒子画像数の多かったクラス2および4を選択し、そこに含まれていた282,557粒子画像を使用して全体の構造精密化を行い、最終的に3.5 オングストローム分解能で電顕密度図を得た.全体構造の分解能は数字上劣化したが,中央部の構造は改善され,L55周辺は中心領域へと繋がる連続的な構造が可視化され (図13A)、中心領域が各サブユニットのN末端に相当することが確かめられた。さらに、中心領域の中でも周辺領域と隣接する部分には、αヘリックスと予想される構造が現れた.加えて、内部のβストランド構造を表す密度領域が改善され,それらのβストランドに接続している中心部の平面状の特徴的な構造が認められた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,白色光下でのPAC4量体の原子モデル構築完成が当初の予定だったが,全体の約1/4までとなった.当初は予定になかったが,最新の単粒子解析技術を使い,4量体の中央領域の分解能改善に取り組んだことが進捗が遅れた原因の一つである.しかし,実績にも書いたように改善に成功したため,計画の修正は正しかったと考える.さらに溶媒に露出している領域は,原子モデル構築において側鎖を正確に配置することが困難な領域が存在したこともモデリングを遅々とさせた原因である.また,FADの密度が明確なところと,そうでない場所があり,これについてもモデリングの障害となった.暗下でのPAC構造解析について遅れているのは,ミドリムシの培養時間が非常に長いためである.研究室の立ち上げと同時に取り組んでおり,細胞がようやく精製可能な段階までストックできたところであり,特に失敗等なかったことを考えると,これは当初の計画が甘かったためと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
PAC4量体の外側において側鎖のモデリングが困難な領域については,主鎖のみを提示する.また,FADについても,配置について不明瞭だった部分は明記する.このような分子の外側の密度部分が明瞭でないのは,PFBを解離させ,PAC分子単体にしてしまったためであると予測している.そのためこの方策は正しいと考える.今年度前半において,(PACα)2(PACβ)2それぞれのサブユニット一つ一つについてアミノ酸一つ一つの座標と配向をマニュアルで確認していく.全ポリペプチドについて終了した段階でMD,エネルギー最小化の計算を行い,最終モデルとする.中央の密度部分について,モデルが予測できないか試みる.以上で,白色光下での原子モデル構築の作業を終了とし,そこから4量体構築様式を探る.また,この結果とCEMOVISの結果とを併せて,PFBのモデル構築を目指す.得られたモデルから,なぜ,偏光を検知できるのか,解釈を試みる.次に平行して,2019年度にストックしたミドリムシの細胞から,PAC分子の新たなる精製を試みる.精製PAC分子を得ることに成功した場合,暗下でのクライオ電子顕微鏡単粒子解析を行う.正確には暗下ではなく,PACを励起しない赤色光下で試料の凍結を行う.白色光下での原子モデルと等価な比較ができるように3.5オングストロームFSC分解能での解析を本年度中に試みる.一方で,共同研究により,青色光照射と連動した凍結装置の開発も行っているので,予備実験等にもできるだけ挑戦する.
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