2020 Fiscal Year Annual Research Report
Architecture of photosensing organelle with PAC of 3D periodic structure
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19H03188
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岩崎 憲治 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 教授 (20342751)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光センサー / クライオ電子顕微鏡 / フラビン / ミドリムシ / PAC |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度,クライオ電子顕微鏡単粒子解析法により再構成された3.4オングストローム分解能のPAC三次元密度図に対して、各サブユニットのN末端およびC末端を除く領域で側鎖を含めた原子モデルの構築に成功した。しかし、N末端に相当する中心部分には、原子モデルを構築することが困難な低解像度の余剰密度が有意に観察されたため、さらなる解析を行い改良に取り組んだ。着目しているPAC中心部以外の構造情報を除くため、その周囲の構造情報を元の粒子像から減算し、局所領域の均一な三次元構造の選択・再構成を行った結果、中心領域の相対的な密度レベルが向上し明瞭になった3.8オングストローム分解能の密度図が得られた。この密度図によって、各サブユニットのN末端主鎖の原子モデル構築に成功した。この点が本年度における大きな成果である。αおよびβサブユニットはシアノバクテリアOscillatoria acuminata由来OaPACのような既知のホモ二量体PACと類似した構造をとっているが、約50残基長いN末端領域をもっていた。各サブユニットのN末端はPAC四量体中心部で会合しており、異種サブユニット間でβシートを形成してヘテロ四量体の安定化に重要な役割を果たしていることが示唆された。側鎖の構築に成功した周辺部においては、サブユニット間に疎水的及び水素結合を介した相互作用の存在が示唆された。以上のように、局所領域の解析により改善された三次元密度図によって、PACヘテロ四量体における4サブユニットの会合様式を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
他のPACとミドリムシのPACが大きく異なるのは、1ポリペプチドにフラビン結合部位とアデニル酸シクラーゼドメインが2つずつある点である。OaPACの1サブユニットの2個分がミドリムシPACの1ポリペプチドに相当する。さらに4つのポリペプチド、つまりサブユニットが会合してPACを形成しているが、その会合様式が謎であった。今回N末端の原子モデル構築に成功したことでこの謎が解けた。また、OaPACではフラビンモノヌクレオチドが会合しているが、ミドリムシPACでは、フラビンアデニンジヌクレオチドが使われている。このプリン環がどのような差をミドリムシPACに及ぼしているかが謎の2つ目だったが、これについても考察が行えるレベルの原子モデルが得られた。以上の点が本課題において進展した点である。遅れているのは、赤色光下、つまり基底状態でのPACの構造解析である。現在の構造は白色光下であり、基底状態と励起状態間の構造変化の議論は難しい。そのため、まずは基底状態での構造解析が必要であり、新たな試料が必要であるが、その精製に失敗している。発現系構築ができないため野生型からの精製となり、1年で可能な精製は4回程度となるが、失敗している。この点が、課題遂行において遅延している点である。
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Strategy for Future Research Activity |
白色光下において、全原子モデルの構築に成功した。従って、ミドリムシPACのヘテロ4量体の会合様式の解明について論文にまとめ、報告する。あわせて、CEMOVISの結果を用いてPACを構成分子とするオルガネラPFBの構造についても報告する。 さらに、PAC精製において収量改良の試みを行い、赤色光下での基底状態構造の解析をクライオ電子顕微鏡を使って挑む。2021年度代表者はクライオ電子顕微鏡を2台導入の予定であり、環境としては最適な状態を準備できる予定である。
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