2019 Fiscal Year Annual Research Report
ネットワーク構造に基づく生命システムの恒常性創出原理の数理的解明
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19H03196
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
望月 敦史 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (10304726)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 恒常性 / ネットワーク / 感度解析 / 分岐解析 / 数理理論 / 細胞周期 / チェックポイント制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
恒常性は外部環境のパラメータの変化に対し、システムの動態の定常解の応答が小さいこと、すなわち感度解析における頑健性と理解できる。また恒常性の破たんは、外部環境に相当するパラメータが大きく変化した時、解が質的に振る舞いを変えること、すなわち定常解の分岐として理解できる。この考え方に基づき、複数の生命システム生命システムを解析し、恒常性が生まれる原理とそれが破綻する機構をネットワーク構造から解析した。 2019年度年度は、細胞周期システムのチェックポイント制御の解明を目指して、基礎生物学研究所の青木一洋と議論を進めた。細胞周期は複数種のCdkやサイクリンといったタンパク質の活性によって調節されており,これらの間に多くの正や負のフィードバックを含む複雑なシステムである。G1期からS期,あるいはG2期からM期へ移行するためには、それぞれ異なるCdk/サイクリン複合体のスイッチ様の活性化が必要である。しかし、これら二種の複合体は、ネットワーク中で反応を介してつながっており、また共通の分子が双方の複合体の活性制御に寄与している。このようなシステムで、ステージ特異的な細胞周期進行がなぜ実現可能なのかは、不明である。異なるチェックポイントが独立に制御されるメカニズムの解明を目指して、議論を行った。 また国立遺伝学研究所の小田祥久教授との共同研究により、植物細胞壁形成におけるROP GTPase反応系を対象とした。このシステムは導管細胞において、水輸送を担う壁孔の周期パターンが形成される際に働くシステムであり、ダイナミクスとしても興味深い。自己組織的周期パターンが安定に形成されるための分子間相互作用構造の条件について解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数理理論の構築は順調に進み、論文作成を進めている。また具体的な生命現象の解明を目指して、実験生物学者と共同研究を行っている。細胞周期システム、植物導管自己組織パターンについて、数理解析の枠組みが進んでいる。研究はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も理論解析を進め、論文業績につなげたい。また具体的な生命現象の解明を目指して、実験生物学者と共同研究を進める。細胞周期システムについて、制御の独立性が実現される条件を理論的に決定し、実際の酵母の系で条件を破壊する摂動実験を行うことにより、検証する。また植物導管自己組織パターンについて、パターンが安定に形成されるための分子間相互作用構造の条件を決定し、実験的に検証したい。
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