2019 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanosensing properties of mitotic chromosomes and chromosome assembly factors
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19H03201
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
島本 勇太 国立遺伝学研究所, 遺伝メカニズム研究系, 准教授 (80409656)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 有糸分裂 / 染色体 / 紡錘体 / 微小管 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝情報の維持継承を担う染色体が細胞分裂期に力のシグナルやストレスに応答・対抗するしくみを調べるため、染色体の力学特性を(1)分子、(2)オルガネラ、(3)細胞レベルの各階層で定量的に決定し、遺伝情報継承が染色体の物性にいかに保証されているかを明らかにする研究を行った。具体的な研究実績を以下に記述する。 (1)染色体構築因子の一分子力学解析:染色体の構築因子が持つ力学応答特性を明らかにするため、分子レベルで力の計測・操作が可能なアッセイの構築を進めた。具体的には、機能化したガラス基板にDNAを固定し、そのDNA上に染色体構築因子を局在させるための観察チャンバーを作製した。また、光ピンセットを用いてDNA結合因子の結合寿命や運動の力感受性を定量解析するための顕微鏡システムを構築した。 (2)オルガネラマニピュレーションによる単一染色体の物性解析:染色体の力学特性を単一オルガネラレベルで決定するため、ヒト培養細胞から染色体をインタクトに精製し、単離した染色体の特定部位をマイクロニードルで捕捉する方法を開発した。さらにこの方法を使って、力を動原体部位(紡錘体との結合部位)に作用させたときに染色体が示す変形ダイナミクスを計測することに成功した。 (3)細胞レベルの染色体ダイナミクスに対する力の効果の解析:分裂期の染色体が力のシグナルやストレスに適切に応答するしくみを細胞レベルで明らかにするため、染色体と紡錘体の定量マイクロマニピュレーションと蛍光ライブイメージングが可能な顕微鏡システムを構築した。具体的には、マイクロニードルの力計測・操作法とアフリカツメガエル卵細胞質抽出液を組み合わせ、分裂後期紡錘体に与えた力が染色体の分裂動態に影響する様子をスピニングディスク共焦点装置によってライブイメージングし、姉妹染色分体の解離速度が作用する力の大きさに依存して変化する様子を捉えることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究項目(1)(2)についてはおおむね計画通りに研究が進展し、(3)については当初計画していたアッセイ系の開発に加えてデータ取得・解析を進めて染色体分配機構に関する細胞レベルの重要な知見を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的を達成するために設定した3つの項目について、それぞれ以下の計画で研究を実施する。 (1)染色体構築因子の一分子力学解析:令和元年度から行っているアッセイ系の開発を引き続き進め、DNA結合因子の結合寿命や運動性を一分子レベルで解析しながら力に対する感受性を定量解析できるようにする。DNAの基板への結合法や精製因子の非特異的吸着を低減できるガラス表面処理法などを検討し、アッセイ系の最適化を図る。 (2)オルガネラマニピュレーションによる単一染色体の物性解析:令和元年度に確立した方法を使って、染色体の力学特性を生理的に関連あるさまざまな力のパラメータ(大きさ、方向、速さ)について解析する。具体的には、材料科学の解析手法(動的粘弾性法)を導入し、染色体が持つ局所の硬さと粘弾性を定量決定する。染色体の部位は紡錘体との結合ハブであり力の集中点であると考えられる動原体部位を中心に解析を進め、解析が終了次第他の領域(染色体碗等)についても解析を行う。 (3)細胞レベルの染色体ダイナミクスに対する力の効果の解析:令和元年度に得られた染色体動態の力感受性がいかなる分子に起因する性質であるかを決定するため、生化学的分子摂動を融合する。卵抽出液で確立された方法(免疫沈降、薬剤阻害等)を用いて標的分子の活性を阻害し、力に対する染色体の応答特性がいかに変調されるかを解析する。標的分子には、姉妹染色分体間の接着を制御するコヒーシンとトポイソメラーゼIIに着目して研究を進める。
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Research Products
(5 results)