2020 Fiscal Year Annual Research Report
静止期Bリンパ球の迅速的活性化の基盤となるエンハンサーアイランド形成機序の解明
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19H03210
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
二村 圭祐 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00462713)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 分子間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
B細胞は静止期状態でエンハンサー領域の基盤を形成しておくことで、急速な活性化に対応できるように準備し、かつ、静止期状態には遺伝子発現を抑制するためにエンハンサー領域を凝集させエンハンサーアイランドを形成するという仮説をこれまでに得られた予備的な結果からたてている。しかし、このようなエンハンサーアイランドは非常に多くのタンパク質やRNAから形成されていると考えられ、この多因子間で形成される複雑な相互作用を定量的に計測することは現在の技術では困難である。そこで、このエンハンサーアイランドを定量的に測るための次世代シークエンシングを用いた新規な多因子間相互作用解析法を確立することを目指し研究を進めている。実験系はこれまでの研究で用いている方法を用いた。具体的には、4-6週齢マウスの脾臓からB細胞をB cell isolation kitで回収した。活性化は、LPS、IL4を含む培地で行った。LPS添加後20分、1時間、24時間の細胞を用いて、LPSとLPSの受容体CD14、TLR4、Caspase11に対する抗体を用いて免疫染色を行い、抗体がそれぞれの因子を細胞内において認識可能であることを確認した。次に、これらの抗体を用いて、新規な多因子間相互作用解析法を用いて、LPSとそれぞれの受容体間での相互作用を検出できるか検討した。その結果、この新規多因子間相互作用解析法は3000個以下のB細胞から相互作用を検出できることがわかった。さらに、LPSとそれぞれの受容体との結合のみならず、1つのLPS分子が複数の受容体と相互作用する、多因子間相互作用も解析できることがわかった。このことから本法は新規な多因子間相互作用解析法として確立できることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに申請者はエンハンサーアイランドを超高解像度顕微鏡によって、ヒストンH3K27アセチル化抗体で染色したB細胞を撮像し、その画像データを定量的に情報解析することで同定してきた。しかし、この手法では任意の細胞断面における情報しか解析できず、真に定量的にエンハンサーアイランドを解析することはできない。申請者が開発中の次世代シークエンシングを用いた多因子間相互作用解析法は、少数細胞から、抗体を用いて因子間相互作用を解析できるものであり、細胞内で生化学的解析を可能にする方法となる。これまでの研究によって、本法が確立可能である予備的な結果を得ることができた。そのため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度においては、この多因子間相互作用解析法を用いて再現性を確認し、本法を確立するために研究を行う。また、現在は脾臓から単離したB細胞を用いて解析に使用しているが、生体組織においても多因子間相互作用が解析できることを示す。そのために、LPSを静脈内投与し、時間経過とともに脾臓を回収し、本法によって、LPSとその受容体との相互作用が検出できるか検証する。この実験によって、本法が細胞のみでなく組織においても多因子間相互作用が検出できることを実証する。組織においても本法によって多因子間相互作用を解析することができれば、これまでにない新規な方法として確立でき、非常に広範囲な生命科学の研究分野で利用可能になると考える。
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Research Products
(3 results)