2020 Fiscal Year Annual Research Report
Small RNA pathway analysis on C. elegans and the relatives
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19H03212
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
菊地 泰生 宮崎大学, 医学部, 准教授 (20353659)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 薫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (20548507)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ゲノム構造進化 / トランスポゾン / C. elegans / 姉妹種 |
Outline of Annual Research Achievements |
トランスポゾンは生物進化を助長する一方で、トランスポゾンの転移活性はゲノム損傷ひいては致死を引き起こすため、真核生物はSmall RNAによるRNAサイレンシング機構を駆使してトランスポゾンを抑制する。近年発見されたC. elegansの姉妹種C. inopinataは、C. elegansの約2倍の体サイズをもち、C. elegansとは大きく異なる生殖様式や生態を有している。C. elegansとのゲノム比較により、C. inopinataのゲノムにはトランスポゾンが特徴的に多く存在し、さらに、C. inopinataはSmall RNAを制御するergo-1パスウェイが欠失していることが分かった。本研究では、C. elegans-C. inopinata比較解析系を用いて、トランスポゾンによるゲノムの構造進化、さらにそれを制御するsmall RNA機構を明らかにすることをゴールとし、以下の研究方法により、生物情報学と生化学、遺伝学的解析を行う。 ・C. inopinataの発達ステージごとのsmall RNA発現解析 ・C. inopinataのArgonauteのインタラクトーム解析 ・野外分離株を用いたC. inopinataのゲノム進化解析 以上により、C. inopinataにおける、small RNA パスウェイとsmall RNAによるトランスポゾン制御機構を理解し、C. elegansとの比較により進化学的理解を得る。さらに、野生採取株のゲノム解析により、C. inopinataにおけるトランスポゾンによるゲノム進化の現状を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
C. elegans において26G-siRNAは主に重複遺伝子とトランスポゾンをターゲットとしており、26G-siRNAのシグナルは、二次的なsmallRNA(22G-siRNA)として増幅され、ターゲット領域の抑制を行なう。C. inopinataは26G-siRNA 合成に関わるergo-1 small RNA pathwayを欠失しており、26G siRNAがオス成虫で見られないことが、網羅的なsmall RNA比較解析により明らかとなった。その一方で、オス成虫においての22G siRNAの減少は軽微であったことから、補完的なpathwayの存在が示唆された。オス成虫での22G siRNAと同領域をターゲットとするsmall RNAを探索したところ22U sRNAがC. inopinataのオス特異的に豊富に存在することが明らかとなり、26G siRNAに代わって一次的なsiRNAとして機能している可能性が示された。今後、22U RNAの合成に関わるArgonaute等の同定を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでの結果に基づき以下の研究を推進する。 C. inopinataのゲノムにはトランスポゾンがC. elegansの約10倍多く存在しており、複数の遺伝子がトランスポゾン挿入により機能破壊されていることから、C. inopinataあるいはその祖先種における高いトランスポゾン転移活性がゲノムの変化に寄与していることが推測される。このことを検証するため、C. inopinataの野外採取株のゲノムを比較し、集団内でのゲノム多様性を明らかにすることを試みた。南西諸島8島から計70株のC. inopinata野外株を採取し、全ゲノムリシーケンシングをおこなった。SNPに基づく系統解析により、C. inopinataの集団は大きく石垣型と沖縄型に分けられることが明らかとなった。これまでのリファレンス株は石垣型であったことから、沖縄型の株について高精度な全ゲノム解読を行い2株間のゲノム比較を行った。その結果、2株は交配により子孫を残すことができるにも関わらず、ゲノム上には逆位や転座がいくつも起こっていることが明らかとなった。今後、ゲノム構造の変化とトランスポゾン活性の関わりについて明らかとするため、さらに詳細な解析を進める。
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