2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H03215
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
イン ベイウェン 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (90422401)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 細胞増殖 / ゲノム縮小 / 遺伝子発現 / 実験進化 / 周期性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はゲノム縮小による増殖速度の低下と実験進化による増殖速度の回復のメカニズムを遺伝子発現量のゲノム周期性で説明することを目的としている。研究内容が4項目に分けられており、年度は下記通りに成果が得られた。 ① ゲノム縮小による発現周期のずれ:ゲノム縮小株の遺伝子発現量を測定した。ゲノム縮小大腸菌(一部)に対し、RNAseqを行い、トランスクリプトーム解析を行った。ゲノム縮小による遺伝子発現の特徴的パターンとゲノム周期性の変化を調べた。さらに、追加項目として、すでに公開されている遺伝子発現データに対しもトランスクリプトーム解析を行い、遺伝子発現のゲノム周期性に普遍性を検証した(論文発表済み)。 ② 増殖速度の回復に伴う発現周期の回復:ゲノム縮小大腸菌に対する実験進化を行い、低下した増殖速度を回復させた。全ゲノム縮小大腸菌株に対して、実験進化(1系列ずつ)を行い、増殖速度が上昇することが確認された。その上昇率がゲノム縮小の長さに相関することも検証された。 ③ 増殖速度と発現周期の同調回復に寄与するゲノム変異:進化前後の大腸菌に対するゲノムリシーケンシングを行い、増殖速度の回復に伴うゲノム変異を同定する。本項目は最終年度に実施する予定であったが、一部を前倒しに実施した。 ④ 遺伝子発現の周期に繋ぐ遺伝子適応度の周期:遺伝子発現ゲノム周期性が増殖速度にも反映されるとの予測を遺伝子ごとの適応度を評価することにより検証した。単一遺伝子欠損株(必須遺伝子を除いた約3900種類、Keio Collection)の増殖速度を測定し、予測が正しいことが分かった(論文公表済)。これは2021年度に実施する予定であったが、実験が進んだため、前倒しに行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前述通り、全体的に実験と解析が計画以上に進んでおり、研究成果を複数論文として公表している。当初の計画にない研究内容が追加されており、遺伝子発現周期に普遍性があることを発見した。この成果を踏まえて、令和3年度以降に予定している遺伝子発現解析を早期に実施することにした。そのため、RNAseqの実施に必要な費用について前倒し使用することにした。また、研究成果が予定より早く出たため、すでに複数論文が受理されている。以上により、本研究目的であるトランスクリプトームのゲノム周期性と増殖速度やゲノム縮小の関係性の検証がさらに加速すると期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
前述研究目的を達成するために、今年度も計画された4研究項目に従って下記通りに実施する。 ① ゲノム縮小による発現周期のずれ:ゲノム縮小株の遺伝子発現量を測定する。2020年度ではゲノム縮小大腸菌(一部)に対し、RNAseqを行った。2021年度は、残りすべての大腸菌株に対し、トランスクリプトーム解析行い、ゲノム縮小による遺伝子発現の特徴的パターンとゲノム周期性の変化を調べる。 ② 増殖速度の回復に伴う発現周期の回復:ゲノム縮小大腸菌に対する実験進化を行い、低下した増殖速度を回復させる。2020年度では、ゲノム縮小大腸菌(一部)に対し、実験進化(1系列ずつ)を行ったが、2021年度は、残りすべてのゲノム縮小株の実験進化を行い、増殖速度の上昇率がゲノム縮小の長さに相関するのかを検証する。 ③ 増殖速度と発現周期の同調回復に寄与するゲノム変異:進化前後の大腸菌に対するゲノムリシーケンシングを行い、増殖速度の回復に伴うゲノム変異を同定する。2021年度は、実験進化が完了した全系列に対し、進化前後の大腸菌株に対するゲノムリシーケンシングを行い、ゲノム変異を同定する。 ④ 遺伝子発現の周期に繋ぐ遺伝子適応度の周期:遺伝子発現が増殖速度に相関することが先行研究で見出されているため、遺伝子発現のゲノム周期性が増殖速度にも反映されると予測する。研究が予定通りに進んでいたため、この項目はすでに完了している。
|
Research Products
(5 results)