2019 Fiscal Year Annual Research Report
新規3次元誘電率顕微鏡の開発と細胞内小器官の連携メカニズムの解明
Project/Area Number |
19H03230
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小椋 俊彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 上級主任研究員 (70371028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 条太郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (20585088)
岡田 知子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 総括研究主幹 (30344146)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 走査電子顕微鏡 / 誘電率 / 培養細胞 / 細胞内小器官 / 3次元構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞内小器官の相互作用とその動的メカニズムの解明を目標とする。こうした細胞内メカニズムの解明のために、我々が新たに開発をした走査電子誘電率顕微鏡の3次元化と高解像度化・高速化を行う。本年度は、誘電率顕微鏡による3次元構造解析を可能とするために、7素子の検出端子による観察システムを開発した。これにより、7枚の傾斜画像を同時に取得することが可能となった。さらに、この傾斜画像から3次元構造を解析するための独自の解析アルゴリズムの開発を進めた。これには科学技術計算言語のMatlabを用いて、Simulated Annealingアルゴリズムを独自に改良することで、3次元空間上のボクセル輝度値を自動的に最適化する方法を開発した。現在、このアルゴリズムの3次元推定精度の検証を行っている。これに加えて、観察速度の高速化を行うため、独自の回路構成による広帯域・高感度アンプを設計し、従来のアンプよりも10倍の感度で5倍の帯域を達成することに成功した。これにより撮像時間が従来の80秒から20秒へと短縮することができた。さらに、この高感度観察システムを用いて、水溶液中のタンパク質やその凝集体を直接観察することに成功した。 走査電子誘電率顕微鏡を用いて細胞内小器官の働きを観察するため、マウス乳がん細胞を独自に開発したdishホルダーのSiN薄膜上に培養し、環境中の微粒子やプラスチック粒子による影響について観察を行った。この結果、微粒子の細胞内への取り込み状況と細胞内部の詳細な構造変化を直接観察することに成功した。こうした成果は、現在学術論文として発表するため、画像データの解析や実験結果のまとめを進めている。以上のように本年度は、当初の目標をほぼ達成したものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、走査電子誘電率顕微鏡へ7素子検出システムの導入と3次元構造解析アルゴリズムの開発を行い、当初の目標をほぼ達成できたものと考えている。さらに、走査電子誘電率顕微鏡による細胞内小器官の解析においても、マウス乳がん細胞を用いて、環境中の微粒子やタンパク質等の付加による構造変化を直接観察することに成功しており、おおむね順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、走査電子県誘電率顕微鏡の開発とこれを用いた細胞内小器官の相互作用とその動的メカニズムの解明を目標とする。この達成のため、次年度以降は、電位信号の検出端子の多素子化による3次元構造解析の高精度化を行う。現在の7素子の検出端子を10素子以上へと増加させる。さらに、1次元アレイから2次元アレイ状に素子の配置を変更することで、傾斜画像の撮影角度を2軸へと拡張し、より高精度の細胞内部の構造解析を実現する。このためには、独自に検出アレイを開発する必要があり、ウェハ基板への半導体プロセスによる加工、あるいは絶縁基板への導電性インクを用いた印刷等を検討する予定である。10素子以上の多素子化のためには、このそれぞれの素子に検出回路が必要となる。しかし、現在のアンプシステムでは、回路構成が大きいため、装置内への導入が困難であり、一層の小型化を行う必要がある。このためには、検出回路に用いるオペアンプICや回路素子をより小さいものへと変更し、高密度の実装を行う予定である。さらに、多数の傾斜画像から高精度の3次元構造を構築し解析するために、AIやニューラルネットを用いた3次元再構成アルゴリズムの開発を進める。これまで用いてきたSimulated Annealingアルゴリズムは、高精度であるが計算時間が長いため、多数の傾斜画像の再構築には適していない。そこで、ニューラルネットワークを用いた先験的情報を用いた類推補完アルゴリズムを開発し、高精度化と高速化を両立させる予定である。 以上の3次元誘電率観察システムの開発を進めながら、マウス乳がん細胞や上皮系の培養細胞を用いた、細胞内小器官の直接観察と解析を行う予定である。この観察において、薬物や環境中の微粒子等を培養液へと添加し、この時の細胞内部の構造の変化を観察・分析を行う。さらに細胞の高精度な3次元構造解析が可能かを実証する予定である。
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Research Products
(6 results)