2020 Fiscal Year Annual Research Report
新規3次元誘電率顕微鏡の開発と細胞内小器官の連携メカニズムの解明
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19H03230
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小椋 俊彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 上級主任研究員 (70371028)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 走査電子顕微鏡 / 誘電率 / 培養細胞 / 細胞内小器官 / 3次元構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、走査電子誘電率顕微鏡の高分解能化を行うため、高精度・低ノイズの初段アンプの開発と10nm厚の窒化シリコン薄膜による高分解能観察ホルダーの開発を行った。窒化シリコン薄膜を10nm厚とすることで空間分解能が6nmまで向上し、より詳細な構造を観察することが可能となった。さらにバックグランド補正やノイズを低減する画像解析アルゴリズムを開発することで、よりコントラストの高い画像を得る事が出来た。 こうした高分解能観察システムを用いて、大気より採取されたPM2.5の細胞内への取り込み状態の解析を進めた。この実験には、マウス乳がん細胞と歯肉上皮細胞の培養細胞を2種類使用した。北京の大気より採取されたPM2.5を培地に添加してから5時間後には、多数のPM2.5が細胞内に取り込まれている事が確認された。さらにPM2.5は、複数の粒子が袋状の細胞内膜に包まれる形で取り込まれており、この細胞内膜には脂質が多く含まれていた。これに加えて、PM2.5の粒子間にはタンパク質が集積している箇所が観察された。これは、細胞がPM2.5を取り込むことで、ヒートショックプロテインやメタルチオネイン等が多く発現し、これがPM2.5の粒子と結合したものと推定される。さらに、細胞内へのPM2.5の取り込み量は、5時間経過後が最も多く、それ以降は徐々に減少していた。これは、一旦取り込まれたPM2.5が細胞外へと排出されていることを示唆している。こうした成果については、2021年の1月にSci.Rep.誌に発表した。さらに本年度は、培養細胞のオートファジーの構造に関して走査電子誘電率顕微鏡により観察を行い、オートファジーの形成状態を溶液中の状態で高分解能観察することに成功し、これを国際誌に発表した。以上のように本年度は2本の論文を国際誌に発表することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究提案では、高機能な走査電子誘電率顕微鏡の開発を進め、これを細胞内小器官の解析に用いる事を目的としている。現在まで、高分解能かつ高コントラスト観察が可能な走査電子誘電率顕微鏡を開発しており、本年度はこれをPM2.5の細胞内への取り込み過程の解析に使用した。これにより、生きた細胞でのPM2.5の取り込み状態や周辺構造を直接観察し分析する事に成功した。本成果は、当初の目標の細胞内小器官の解明に沿うもので、おおむね順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、マウス乳がん細胞や上皮細胞等の培養細胞を用いて、走査電子誘電率顕微鏡により細胞内小器官の直接観察をさらに進める。これに加えて、同一の撮像箇所に対して、3次元観察が可能な光学顕微鏡を用いて観察を行う。こうした、誘電率顕微鏡による高分解能構造情報と光学顕微鏡の3次元構造情報を融合することで、3次元的な構造変化をより詳細に分析し、細胞内小器官の生理的機能や働きの解明に繋げる予定である。今後の計画では、これらの3次元構造の解析アルゴリズムと誘電率観察画像との比較分析アルゴリズムを新たに開発する。これには、昨年度から引き続き開発を進めている、非線形最適化法の1種であるSimulated Annealingアルゴリズムや階層型ニューラルネットワークによるディープラーニング法を活用する。この開発用の言語としては、数値計算処理言語であるMatlabとAIの開発で一般的に用いられているPythonを併用する。MatlabやPythonにより開発したアルゴリズムは、オブジェクト化し、観察画像のデータ処理の自動化を進める。これと並行して、走査電子誘電率顕微鏡のさらなる分解能の向上を行うため、観察した画像をSimulated Annealingアルゴリズムを用いた画像補正ルーチンを新たに開発し、取得画像以上の高分解能化を目指す。 以上の誘電率観察システムの処理アルゴリズムの開発を進めながら、マウス乳がん細胞と上皮細胞の直接観察実験を進める。解析を行う細胞内小器官としては、リソソームや細胞内小胞、ミトコンドリアを目標とする。これらの細胞内小器官は、細胞内に広く分布しており、3次元構造解析や変化の解析において、観察や分析が容易であると予想される。これに加えて、紫外線を照射した際の細胞内小器官の変化等も解析し、当初の目標である細胞内小器官の包括的な機能の解明に繋げる予定である。
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Research Products
(4 results)