2019 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of mechanisms how skeletal muscle integrates different cell types to form a functional organ.
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19H03233
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀬原 淳子 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 連携教授 (60209038)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 骨格筋発生 / 増殖因子 / 神経筋接合部 / プロテアーゼ / 臓器形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、骨格筋がそれに必要な異種細胞・組織をどのようにインテグレートさせて、臓器として発達するのかを、増殖因子の観点から解明し、この問題に挑戦する。申請者は臓器構築過程における膜型増殖因子や接着因子、それらのプロテアーゼ制御の研究を行い、異種細胞・組織間での細胞分化制御や形態形成への関与を見出してきた実績を持つ。さらに近年、宇宙の微重力環境における骨格筋萎縮の原因を探る研究を行なっている。本研究ではそれらの研究で得られた着想を元に、次の作業仮説を検証する。 (1)骨格筋における異種組織のインテグレーションと協調的な発達には、骨格筋からのシグナルが主導的な役割を果たす。 (2)それらの異種細胞・組織は、固有の応答として特異性の高い遺伝子発現、特に細胞外基質・増殖因子などを発現活性化させる。 (3)それら臓器特異性の高い細胞外基質は骨格筋の形態的・機能的発達に関与する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
我々は、ゼブラフィッシュのエンハンサートラップのスクリーニングによって、胚の腱細胞で発現する転写因子Ebf3の同定に成功した。発現が誘導される時期はもう一つの転写因子Scleraxisよりもさらに早く、また筋節周囲の結合組織でも発現することに興味を持ち、哺乳類における同様の細胞集団の同定と、Ebf3の役割・機能の解明を目指した。繰り越しにより、系譜特異的な遺伝子ノックアウトとともに、発生時期特異的なノックアウトを行い、Ebf3が必要とされる細胞系譜とその時期を明らかにすることができた。 具体的には、Ebf3flox/floxマウスを作製し、全身Ebf3 KOマウスでは、体節由来の椎骨と肋骨が正常に形成された一方、 lateral plate mesoderm (LPM) 由来の胸骨で骨化の遅延が確認されたこと、LPM特異的Ebf3 KOマウス評価から、LPMでのEbf3発現が、自律的かつ胸骨特異的に骨化に機能することを示し、また間葉細胞からのRunx2+骨芽前駆細胞の産生という、早期の骨芽細胞系譜の分化へのEbf3の制御を明らかにした。更に、Ebf3の骨芽細胞系譜での機能時期がE10.5前後であることを時期特異的Ebf3 KOマウスにより特定できたことから、E10.5胚の胸部LPM組織を、Ebf3 KO胚とヘテロ胚それぞれからFACSで採集し、遺伝子発現比較を行い、Ebf3がLPM間葉細胞からの線維芽前駆細胞と骨芽前駆細胞の分化分岐点に作用し、胸骨骨芽前駆細胞の産生を制御していることが明らかになった。発生過程における筋形成には顕著な変化は認められない一方、宇宙滞在中での発現変化が見られるなど、この遺伝子が筋組織の重力依存性に関与する可能性も示唆した。 そのほかに、骨格筋再生のライブイメージングや、筋再生における糖代謝の変化とその役割などの研究を行い、論文発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、トランスクリプトームデータを活用して、発生後の骨格筋の発達と維持機構を調べている。特にユニークな系として、宇宙実験も含めた骨格筋の重力依存性に関する研究を行っており、転写制御因子を中心に、それらの関与について調べている。マウスなどの陸生動物では、宇宙では運動もできなくなるので、運動抑制効果と無重力効果を分離して解析することが難しい。それに対して、ゼブラフィッシュは、国際宇宙ステーションでも地上と同じように運動することができることがわかり、骨格筋への無重力の影響をより効果的に解析できることがわかった。そこで再びゼブラフィッシュを用いて、無重力が骨格筋に与える影響を精査し、そこに関わる転写制御機構を解明している。
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