2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H03236
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
梅園 良彦 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (20391881)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | エネルギー代謝 / 再生 / プラナリア |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、プラナリア再生とエネルギー代謝との関係を解明することを目的として、まずは、single cell transcriptomeをおこなうためのモデル系の探索をおこなった。その結果として、以下に示す2つの実験モデル系について検討をおこなった。 1つ目は、プラナリア咽頭の部分再生モデルで、通常状態では、咽頭内に幹細胞は全く存在していない。一方で、損傷を与えると24時間以内に幹細胞は咽頭の基部側から咽頭内部に侵入し増殖しながら創傷部に集積して、筋肉細胞や神経細胞などに分化することがわかった。また、この過程において、細胞分化に伴い、酸化的リン酸化が亢進するかのような代謝関連遺伝子の発現変動を観察することができた。次に、whole mount in situ hybridizationによる遺伝子発現解析をおこなったが、技術的に非常に困難であった。 2つ目は、尾部断片からの頭部再生モデルで、幹細胞の増殖および分化に伴い、やはり、酸化的リン酸化が亢進するかのような代謝関連遺伝子の発現変動を観察することができた。また、このモデルを使用して、酸化的リン酸化の阻害剤であるアンチマイシンを適当な濃度で処理すると、再生にともなう幹細胞の増殖および分化を実際に阻害できることがわかった。一方で、恒常性の維持に伴う幹細胞の増殖には影響しないこともわかった。さらには、メチルピルビン酸処理は、再生に伴う幹細胞の増殖を促進する効果があることもわかった。 最後に、解糖系に関与すると考えられるプラナリア遺伝子を新規に同定した。興味深いことに、この遺伝子はプラナリア生殖系幹細胞で特異的に発現しており、プラナリア生殖系幹細胞とプラナリア体性幹細胞とは活用されている代謝系がそもそも異なる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
single cell transcriptomeをおこなうためには、事前に入念な実験モデル系の探索をおこなう必要があった。そのために、2つの実験モデル系を検討し、結果として、尾部断片からの頭部再生モデルはsingle cell transcriptomeに適していると考えられた。また、本大学に共同利用研究設備としてcell sorterの購入希望を申請し、幸いなことに受理されたため、当初計画していた実験スケジュールを変更し、共同研究に依存しなくても令和2年度からは本大学にてcell sorterを用いた実験が積極的に行えるようになったことは極めて重要な研究環境における進展である。また、解析ツールとして、アンチマイシンおよびメチルピルビン酸の有効性も確認することができた。 現状においては、研究仮説を支持する結果が得られているため、おおむね順調に進展しているとの判断に至った。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度からは、実際にsingle cell transcriptomeをおこなうための準備として、プラナリア細胞の解離条件の設定およびcell sorter使用などを計画していたが、新型コロナ感染症拡大防止対策のために、全国レベルで緊急事態宣言が発表されたため、明確な研究の推進方策を立てることができておらず、現状においても、未だ研究を進めることが全くできていないというのが本音である。現在は、たとえ、ウェット実験が完全に止まってしまった状況下でも、リモートワークでドライ実験が進められるように新たな共同研究先を探している。
|
Research Products
(1 results)